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【06.07.30】愛知県 借金依存で万博支出2132億円 

7月30日「愛知民報」

 「愛知万博は黒字」「県は万博で儲かったのでは」といわれますが、実態はどうでしょうか。黒字になったのは博覧会協会の「万博運営費」。一方、会場建設費やリニモ(東部丘陵線)、名古屋・瀬戸道路建設などの万博関連開発事業費を負担した国と愛知県・名古屋市など関係自治体は借金がふくれあがり、財政難が深刻化しています。そのうえ、万博にむけてつくったリニモや名古屋・瀬戸道路はガラガラ。神田県政と与党の責任が問われています。

万博後も増える借金残高

 愛知県が支出した万博事業費は、誘致や会場建設費が602億円。愛知環状鉄道など鉄道アクセス45億円、リニモ553億円。名古屋・瀬戸道路など道路アクセスに932億円。合計2132億円。支出のピークは開幕3年前の02年で約600億円。

 県は関連事業費の大半を借金(県債)でまかないました。県債残高は2005年度末で約3兆7700億円。赤ちゃんからお年寄りまで県民1人当たり52万円。1日当たり2億円が利子払いにきえます。史上空前の借金です。県債残高は万博終了後も増え続けます。昨年2月発表の「財政中期試算」によれば、2010年には4兆330億円、県民1人当たり57万円に達します。

 県当局は「バブル崩壊後に発行した県債の償還などのため新たに県債発行は避けられない」といいます。日銀のゼロ金利政策解除により利率が高くなった場合、ゼロ金利時代につくった返済計画がゆきづまる恐れがあります。

名古屋・瀬戸道路 どうしようもない

 名古屋・瀬戸道路は東名高速道路日進ジャンクションと県道力石名古屋線の長久手インターチェンジ間を結ぶ2・3キロの自動車専用の有料道路。万博アクセスとして約647億円をかけてつくられました。愛知県道路公社が管理・運営しています。

 同公社は万博閉幕後も1日1万台以上の需要を見込みましたが、通行量はそれをはるかに下回っています。

 記者は22日に名古屋・瀬戸道路を取材しました。長久手料金所の一般ゲートの大半が閉鎖されています。万博期間中は万博帰りの観光バスなどが列をなしていましたが、いまでは数分に1台程度通るだけでした。

 長久手料金所前の県道力石・名古屋線を走行していたトラック運転手の長野努さん(52)は「一般道路に通じていないのでほとんど通らないよ。たった2・3キロに150円は高い」と話していました。

 利便性をはかり通行量を増そうと東海環状自動車道と結ぶ案も浮かんでいますが、建設費が膨大なものになり、いっそうの悪化が心配されます。

 県道力石名古屋線(猿投グリーンロード)の中山から八草間を218億円かけて4車線化しましたが、同道路の通行量も増えていません。

リニモ 今年度赤字29億円か

 リニモを運営する愛知高速交通株式会社には愛知県と5市町が37億円(総出資額の51・85%)を出資しています。県は万博後の乗客数を1日3万1500人と見込みました。ところが今年3月までの乗客数は1日平均1万数千人前後と目標の半分以下。

 会社は乗客増をめざし、15日の万博記念公園(モリコロパーク)開園に合わせて、「リニモ1DAYフリーきっぷ」の発売をはじめるなどしていますが、乗客増につながるか疑問です。

 沿線の学校が夏休みに入り乗客減が見込まれることから、8月からリニモダイヤが6分間隔から7分間隔になります。学校が夏休みに入った22日朝9時前のリニモ藤が丘駅。先日まで学生で満員だった3両編成(定員360人)の車内は各車両に10数人程度。クラブ活動で学校へ行くという栄徳高校生が芸大前駅で下車すると、記者の乗る車両は5人に減りました。

 万博記念公園駅で下車。梅雨の晴れ間で夏休みが始まって最初の土曜日。リニモを利用し、開園したばかりの万博記念公園(モリコロパーク)を訪れる人が多いかと期待していたのですが……。リニモが着くごとに下りてくるのは数組の家族づれだけでした。

 万博のあった05年度でもリニモの赤字は約3億円。06年度の赤字は28億円―29億円とみられています。

 予想を下回る乗客数などから会社は、債務返還期間を当初の30年から50年に延長することを県など関係機関と協議をはじめています。