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【06.06.18】衣浦臨海鉄道横領事件 ずさん3セク 決裁責任者 10年間空席とは… 

6月18日「愛知民報」

問われる行政責任

 経理担当者の横領事件が発覚した衣浦臨海鉄道(宅見照雄社長)で、10年間にわたり決裁責任者の総務部長が空席で、容疑者が一人で切り回すというずさんな管理体制だったことをわかり、同社に出資している愛知県の監督責任を問う声が出ています。

 同社は、衣浦臨海工業地帯の貨物輸送をおこなうために1971年、自治体と民間企業の出資で設立された第3セクター鉄道です。現在の主な荷主は中部電力碧南火力発電所で、石炭灰と炭酸カルシウムの輸送が主力です。

 最大株主は愛知県とJR貨物。それぞれ39・3%出資しているほか、地元4市(碧南市、半田市、高浜市、常滑市)も合計5・3%負担しています。碧南市の場合、出資金のほかにこれまで総額1億132万8千円を「固定資産税見合い分」として同社に補助しています。従業員数は27人。役員には、非常勤ですが、取締役に副知事、監査役に県出納長が就任しています。

 今回の横領事件で記者会見した宅見社長によると、容疑者の元総務部次長は実在する軌道整備会社名の請求書を偽造するなどして枕木交換の架空工事をねつ造。その工事金884万円余を自分の口座に振り込みました。

 経理の決裁責任者の総務部長はこの10年間空席のまま。経理書類はノーチェック状態でした。

 同社の内部調査によると、架空工事は2004~05年度だけで20件、約5500万円が不正支出されており、今後被害額は増えると見られます。

 日本共産党愛知県委員会と地元4市の同党市議団は2日、神田真秋県知事にたいし横領事件の全容解明と役員の責任明確化再発防止を申し入れました。同党の林のぶとし前県議らは、ずさんな管理体制を放置したままで、同社に税金を投入してきた県の責任は重大だと指摘しました。

 県交通対策課長は、5月12日に県地域振興部長名で、他の交通関係3セク会社にたいし社内管理体制の確立と社員の法令遵守を求める依頼を出したと述べました。

 同社は、2004年度決算で726万円の経常損失を出しています。資本金37億6900万円のうち22億6900万円を累積損失の穴埋めに充てました。この減資で、県の出資金約15億円のうち約9億円が消えたことになります。

 同社にたいしきびしい県民監視が必要です。