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1.税金の巨大なムダづかい中部国際空港
2.中部国際空港問題の経過
3.空港見直し運動の経過と成果
4.空港中止の運動を旺盛に
5.空港問題資料集

中部国際空港問題―外国航空会社から必要ないといわれる「国際」空港―

 関連事業を入れると1兆3000億円以上になる巨大事業の中部国際空港。全国各地で空港建設の見直しの運動がまきおこる中、いま、建設の是非が問われています。中部国際空港問題について考えてみましょう。

税金の巨大なムダづかい中部国際空港計画

 中部新空港の建設が計画された背景には、もともと次のような想定がありました。それは、21世紀の初頭には名古屋空港は満杯になる、国際ハブ空港の整備と航空ネットワークを強化する必要がある、中部圏は産業・技術の中枢圏域をめざしており、国内外の旅客・貨物の需要がさらに増加する、などです。同時に、中部新空港本体の建設や関連事業の推進によって、産業・技術の振興や地域経済の活性化も大きく期待されるとされました。
しかし、これまでの国会論戦等を通じ、この計画には航空需要や採算性、環境破壊などいくつもの問題点があることが明らかになり、県民や関係自治体との矛盾はいっそう深刻になってきています。その主な問題点をみてみましょう。

低迷が予想される航空需要

 これまで国が2次にわたる空港整備計画で確認してきた中部新空港の国際ハブ空港としての役割は、今日では国自身も言及できない状況です。5月に総務省から国土交通省に出された勧告では、中部新空港を含む全国的な航空需要の算定自体がいいかげんなものであり、基礎的なデータの蓄積保存もないものであることが明らかになりました。
とりわけ中部新空港の需要予測に関しては、在日外国航空会社協会からも、「新中部国際空港は主に中部地域(中部財界)の威信のための施設」「特に必要がない」、「(名古屋空港の)滑走路の使用率は飽和点からほど遠い」と厳しく指摘されたほどです。
韓国の仁川(インチョン)空港をはじめ、アジアには大規模な国際ハブ空港が林立しており、国内においても、国際線は関西国際空港や成田空港など東京圏へ集中する傾向がつよまっており、国際旅客や貨物の需要増は見込むことはできません。また、国内旅客及び貨物についても、既存の名古屋空港は羽田や伊丹など国内線大空港とのネットワークをもっておらず、地方空港との間は航空会社一社でネットワークされている路線が多いため、航空自由化によって、関東圏や関西圏への需要が集中する傾向がでているのが実情です。
国会で八田参院議員がおこなった質問でも、国土交通省の答弁で中部新空港は滑走路1本が基本計画であることが明らかになっており、中部新空港は名古屋空港の代替空港としての性格をもっていることがいっそう明確になりました。
中部新空港は当初の計画では、関西国際空港と同じ高い着陸料で、10年以内に単年度黒字へ転換し、30年以内には債務返済を完了することを見通していました。しかし関西空港は、離着陸料が高いことなどが原因で需要の低迷を生み出し、大きな赤字をかかえるに至りました。関西空港はその後、国が税金で穴埋めをすることによって、離着陸料の引き下げを進めました。このことからも、中部新空港の航空需要が低迷することは容易に想像できます。
こうした中で、空港会社は採算性について、「機能化をはかって特色をもたせる」(平野社長)ことや、着陸料以外の収入増をはかるために、空港島の商業施設など,施設の充実を口にし始めています。しかしこの方向は、関西空港ですでに破たんずみといえます。いま、国土交通省は、空港整備部門を公的法人とし、残る管理・運営部門を、民営化させる上下分離方式を検討していますが、新たな自治体負担や県民負担を押しつける可能性について注目しておく必要があります。

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名古屋空港「満杯」論のごまかし

 名古屋空港自体は、限界離着陸数が13万回ともいわれ、現在、年間離着陸数が12万回に近づいていることをもって、「満杯」の根拠とされています。しかし、ここにも大きなごまかしがあります。この年間離着陸数12万回という数字は、実は小型機や自衛隊機の離着陸数を含めた数であり、それらを除いた定期航空路線は8万4000回(1999年)に過ぎません。しかも、旅客便の平均座席利用率は、羽田空港や関西空港に比べても低い水準で、56・3%(97年度 全国平均は63・2%)になっています。採算ラインは60%といわれていることから、航空機自体が、中・小型の航空機に移行してきています。しかも、名古屋空港の国際線ターミナルは、99年に完成したばかりであり,対応能力は以前よりも大きくなっているのが実情です。
こうしたことを考えれば、名古屋空港が満杯になるという予想は、ごまかし以外のなにものでもありません。たとえ航空需要が順調に伸びたとしても、自衛隊基地の撤去や、小型機の移転、航空機の大型化、座席利用率の向上をはかれば、今後の需要に名古屋空港は十分対応できます。

「前島」計画はすでに破たん

 新空港建設と関連事業が、地域経済の活性化に結びつかないことは、関西空港の例を見れば明らかです。関西空港の前島計画にあたる「りんくうタウン」は、集客の中心となる商業業務ゾーンでの分譲がわずかに14%であり、大阪府企業局は計画の破たんを認めています。関空周辺の自治体では、空港建設に伴う過大な開発事業が自治体の財政を圧迫し、大規模な人員削減や福祉・くらしにかかわる予算が切り捨てられ、かえって地域経済を疲弊(ひへい)させる原因にもなっています。
中部新空港でも,建設にあたって地元常滑市の同意を得るために計画された「前島」建設は、三菱総研の調査によっても、集客や企業誘致の見通しが立ちませんでした。ディズニーランドの集客を超えるアミューズメント施設や、関東圏や関西圏から宿泊に来ることを想定したホテル誘致、低燃料電池基地をつくり電気を安価に提供することで,企業を誘致するという「プロトン・アイランド構想」など、荒唐無稽ともいえる計画が検討されていますが、いずれも見通しは立っていません。

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環境悪化は必至

 新空港の建設が予定されている常滑沖は、「伊勢湾の子宮」と呼ばれている豊かな漁場であり、ここを埋め立てて空港を建設することは、伊勢湾水域の環境を大きく破壊することにつながります。
日本海洋学会は、新空港建設の埋め立てによって、漁獲量がこれまでの10分の1に激減すると警告しています。伊勢湾は、東京湾や大阪湾とは比べものにならないない豊かな漁場であり、沿岸性のスナメリなど豊かな生態系が息づいている海域です。必要のない空港建設によって、環境を破壊することは許されません。
また、美浜町に生息する天然記念物のカワウなどの、常滑沖を飛行する航空機と鳥が衝突するバードストライク問題や、海部郡や美浜町など周辺地域での騒音問題など、予想される環境破壊はたくさんあります。

市民との矛盾を広げる交通アクセス

 新空港を利用する場合、空港へのアクセスは、愛知県民にとっても、また岐阜・三重など周辺県にとっても重大な問題となります。しかし、交通アクセスの主な手段である、名鉄常滑線の整備と知多横断道路及び空港連絡道路は、常滑市民との矛盾をひろげています。
名鉄常滑線の整備による代替バスの運行は、市民の移動を困難にし、知多横断道路や空港連絡道路の建設は、市民の住環境の悪化、市の分断をはかるものとして、市民から批判の声が強まっています。こうした中、2000年10月に着手された用地買収は遅れており、常滑市中心部の住宅地では騒音などを心配する住民が反対運動をすすめ、一部では道路建設予定地を共同所有する土地トラスト運動が巻き起こっています。

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自衛隊基地の機能強化につながる「一元化」

 県が構想している名古屋空港のゼネラルアビエーション(GA)空港化計画は、名古屋空港を事実上、「廃港」にし、小型飛行場にするという計画です。GA空港は、コミューター空港と常駐小型機による空港利用ですが、県の構想では、全国のコミューター旅客の24%が利用するという過大予測をしています。小型機を使用する航空事業も減ってきており、採算の見通しはありません。県は、GA空港の事業主体として「県または県が中心となる第3セクター」を考えていますが、県財政を圧迫し、地域経済を冷え込ませることは明らかです。
しかも、GA空港の利用面積は現在の半分以下にしか過ぎません。愛知県は、新空港建設の前提として「一元化」を容認し、名古屋空港を買い取る約束をしてきました。購入すると600億円をこえる負担になります。
また、自衛隊が航空管制を指揮するようになれば、大規模な自衛隊基地が誕生することになり、その機能もいっそう強化されます。周辺事態法など「戦争法」の導入によって、自衛隊基地の機能の強化は住民の安全を脅かすことになり、いま周辺自治体の首長を含めて住民の批判の声は大きくなっています。
愛知県には、航空自衛隊として小牧基地、隣接する春日井市の高蔵寺弾薬庫、陸上自衛隊として第10師団司令部をおく守山、豊川駐屯基地など数多くの自衛隊基地が存在し、近隣の静岡県には浜松基地、岐阜県には各務原基地などが存在しています。今なすべきことは自衛隊の増強ではなくて、縮小であり、自衛隊小牧基地を撤去して、名古屋空港の有効活用をはかることこそ県民の立場にたった方向です。

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