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新型コロナ 通所介護に突然の休業要請2週間 高齢者の命つなぐ支援拡充こそ

受け入れ人数を制限して運営する事業所の利用者とスタッフ=20日、名古屋市内

 名古屋市南東部で高齢者に新型コロナウイルス感染症が発生した事を受けて、市が拡大防止のために行った126の通所介護事業所(利用者約5800人)への2週間の休業要請。サービスが必要不可欠な利用者がいる場合は対象外とし、事業所に感染防止策を求めましたが、突然の要請に現場は戸惑いと不安に包まれました。

■ 「生活の場なくせない」

 通所介護は、利用者の社会的孤立感の解消や心身機能の維持、家族の介護負担の軽減などを目的に、食事や入浴支援、機能訓練などを日帰りで提供するものです。

 市内のある事業所は、要請が届いた6日午後に緊急の職員会議を開き、食事や排せつに全面的な介助が必要な人や高齢で一人暮らしの人、家族が病気で介護できない人など、通所が不可欠な利用者の受け入れを決めました。

 要請された7日~20日まで利用者を半数に制限し、検温や血圧の確認、1時間に1回の換気、送迎車や設備の消毒、職員の体調管理など感染対策に努めて運営しました。

 週に数回入浴介助などを利用する80代の女性は、「家でできないことをやってもらって助かる」と話します。

■ 重症化のリスク

 所長の女性(65)は、「高齢者は重症化するリスクが高く、休業要請に反対するわけではない」とした上で、「ただ、自宅での生活が困難な利用者と家族がいるのも実情です。準備期間もなく突然『休め』というのは乱暴です。利用者の生活の場をなくすわけにはいかなかった」と話します。

 利用者のケアプランの変更や家族への連絡、訪問などにも追われました。「高齢者は他の施設を併用していたり、訪問ヘルパーや訪問看護を利用していたり、多くの人が関わっています。感染予防というなら感染に関わる情報開示や専門家を実地に入れた感染防止策をとってほしい」

 休業要請について日本共産党名古屋市議団が16、17両日に実施した調査によると、回答した34施設のうち「完全休業」は11施設、「一部受け入れ」は22施設、「通常運営」は1施設でした。

■ 報酬の2~6割

 休業日数を14日間と回答した事業所の損失額は40~600万円で、平均的な月の介護報酬の2~6割に上ります。行政への要望として5割が感染者に関わる情報開示、4割が休業補償を求めています。

 党市議団は17日、市に▽休業要請した事業所への情報提供▽休業補償▽マスクやアルコールの提供―などを要請。18日には本村伸子衆院議員とともに、政府の責任で休業補償を行うことなどを厚生労働省に要請しました。

 市は18日、休業要請の終了を発表。会見した河村たかし市長は休業補償をする意向を示し、「長らく大変ご苦労をかけました」「全額補償するよう指示している」(「朝日新聞」19日付)と述べています。

 21日から通常営業した事業所の所長の男性(50)は、久しぶりに施設で入浴した利用者が立っていられなくなるなど、身体機能の低下があったと話します。「できる限りの感染防止策をとっているが、いつまで続くのかという思いがある」

 岡田ゆき子市議が語ります。

 「市が休業要請を判断したのだから事業所への支援をはじめ、サービスを受けられない利用者のケア、介護のために仕事を休んだ利用者家族への補償も行うべきです。高齢者の命をつなぐ介護事業所が通常業務に戻るまで国・市の支援が求められている」

(3月24日 しんぶん赤旗)