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温暖化・大気汚染に危惧 石炭火力発電所建設問題シンポ

 石炭火力発電所の建設をこのまま進めていいのか―。中部の環境を考える会が名古屋市内で開いたシンポジウム(6月18日)では、二酸化炭素の大量に排出による気候変動の加速、窒素酸化物や硫黄酸化物など大気汚染物質の増加などを危惧する声が相次ぎました。

 安倍政権は、2014年に閣議決定した国の「エネルギー基本計画」で、石炭を原発と並んで「重要なベースロード電源」と位置付け、石炭火力発電所の建設ラッシュを推進しています。NPO法人・気候ネットワークの調査によれば、全国で49基の新規計画(12年以降)があります。

 愛知県内では中部電力が石炭火力としては北半球一の規模(総出力410万㌔㍗)の碧南火力発電所(碧南市)を営業運転中です。石油を燃料としている老朽化した武豊火力発電所(武豊町)を廃止し、石炭火力発電所(出力107万㌔㍗)に建て替える計画を発表し、現在、環境アセスメント中です。

 シンポジウムでは、気候ネットワークの山本元さんが、「2015年のパリ協定で世界は『化石燃料時代の終わり』に合意した」と述べ、イギリスやフランスの動きを紹介し、主要国(G7)で石炭火力の新規計画を進めようとしているのは日本だけと指摘。日本国内でも各地で反対運動がおき、関西電力の赤穂発電所(兵庫県赤穂市)の重油・原油から石炭への転換計画を中止に追い込んだことをあげ、「豊石炭火力発電所はまだアセス段階。まだ運動によって中止できる」と強調しました。

 竹内恒夫・名古屋大学大学院教授は石炭火力発電所から出る石炭灰の環境問題に言及しました。石炭灰はセメント原料や土木建築資材に利用してきたが利用量は年々減少していると述べ、碧南石炭火力発電所も利用出来ずに残った石炭灰を中電処分場で埋め立てているが、まもなく満杯になると指摘。「武豊石炭火力発電所は石炭灰の処理を発電所前の海域に埋める計画だが、石炭灰には水銀などは様々な物質が含まれており、碧南と武豊の2つの石炭火力発電所に挟まる三河湾の環境悪化が懸念される」と語りました。

 中部の環境を考える会の宇佐見大司代表世話人は中部電力が武豊火力発電所の環境アセスメント文書のインターネット公開を今年2月13日に終了したことを批判し、「環境サセス文書は事業完了まで公開すべきだ」と述べました。

 参加者から「中電の対応はひどい。自分のパソコンに保存したアセス文書も期限付きで、見ることも印刷することもできない。県民に情報を隠して武豊石炭火力発電所を強行しようとしている」、「トランプ米大統領がパリ協定からの離脱を表明した。安倍政権が石炭火力発電所を推進すれば、石炭は米国などの外国から輸入する。まさにアメリカ追随だ」などの意見が出されました。

 県議会では日本共産党の下奥奈歩県議が振興環境委員会(6月27日)で質問し、石炭火力はどんな高い技術を用いても、天然ガス火力の2倍の二酸化炭素を排出することをあげ、「武豊石炭火力発電所計画はパリ協定に反する」と述べ、計画中止を求めました。

(7月15日 しんぶん赤旗)