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【06.04.09】愛知に広がる生活難と格差 崩れる「元気」神話

4月9日「愛知民報」

 愛知万博開催、中部国際空港開港、トヨタ自動車の高利潤などで「元気な」といわれる愛知県。万博・空港関連公共事業費は県発表で約2兆円。しかし、地元中小企業からは「うるおった」という声は聞かれません。県内では今、低所得者が増え、経済格差が広がっています。小泉内閣がすすめる社会保障改悪や地方財政切り捨ての「三位一体改革」とあいまって、県民福祉は細るばかりです。県内で何が起きているか、地域の実態を取材しました。

生活保護受給者が急増

 製造品出荷額全国一の愛知県.しかし、90年代後半から、生活保護や就学援助を受給する世帯が急増しています。名古屋市の生活保護の世帯は、1984年度からバブル経済期の91年度までは減少していましたが、バブル経済が崩壊した92年度の9899世帯から2004年度の2万60世帯へと倍増しています。

 最近の被保護世帯の特徴として高齢者世帯の受給者が急増していることがあげられます。高齢者世帯に占める割合は87年度の35・3%から04年度には45・7%にも達しています。母子世帯の受給も増加傾向にあります。

 名古屋市南西部にある市営住宅(1615戸)では戸数の11%にあたる181戸が生活保護を受けています。この3年間で49戸増えました。同住宅に住み昨年から生活保護を受けているAさん(69)は「昨年までは5万円の年金に息子からの仕送りで何とか生活をしてきた。一昨年に息子が失業して仕送りがなくなり何ともならなくなった。共産党の人に相談して生活保護を受け助かった」と話しています。

 名古屋市北西部の日本共産党の生活相談員は、「母子家庭からの生活相談が増えています。母親が育児のために働けない。離婚した夫が養育費や慰謝料を払ってくれず生活が出来ないから『生活保護を受けたい』という相談が増えています」と語っています。

3分の2が就学援助

 経済的理由で学用品や給食費、就学旅行費などの公費援助を受ける児童・生徒数も急増しています。

 名古屋市の小学校では、95年度の就学援助受給者は1万331人、全児童数に対する割合は7・8%。05年度には1万7158人、14・5%にはね上がりました。中学校では95年度の受給者は5206人、受給割合が8・1%。05年度は8402人、16・1%になりました。児童・生徒数の減少もあり全児童・生徒数に占める割合は10年間で2倍になりました。

 校区内に大規模市営住宅をもつ名古屋市南東部の小学校では、クラス児童の3分の2が就学援助を受けています。

 小泉内閣の「三位一体改革」によって就学援助の国庫補助負担金削減を機に、名古屋市は今年度から生活保護の所得基準額の1・3倍としてきた就学援助の現行所得基準を生活保護基準並みにきびしくします。この措置で約1500人の児童・生徒が支給打ち切りになると見られます。

 津島市でも現在12%を超える児童・生徒が就学援助を受けていますが、今年度から就学援助の所得基準額を生活保護基準の1・2倍から生活保護基準並みにします。

 現場教師は「今でも就学援助を受けられない生徒のなかには月3500円の給食代が引き落としできないこともあります。所得基準がきびしくなればもっと大変になります」と語っています。

国保料滞納23万世帯

 自営業者などが加入する国民健康保険の保険料(税)滞納世帯が県内で23万世帯にのぼり、1年以上滞納して保険証を取り上げられた世帯が2千件を超えました。

 これは愛知県社会保障推進協議会(社保協)が昨年10月に実施した自治体キャラバンの調査の集計で明らかになりました。滞納世帯は23万2456世帯で、国保に加入している全世帯(約138万世帯)の16・8%、2000年(16万6656世帯)から5年間で約6万5000世帯も増えています。

 国は、国保料滞納1年以上の世帯から保険証を取り上げることを市町村に義務づけ、代わりに「資格証明書」を発行しますが、この場合、いったん窓口で医療費全額を支払わなければなりません。今回の調査で資格証明書発行世帯は2322世帯。資格証明書発行が全市町村に義務づけられる前の2000年(53世帯)に比べて急増しています。有効期限を3カ月などに限定した「短期被保険者証」の発行は5万5871世帯となっています。

 愛知県保険医協会事務局の澤田和男事務次長は「国保料の滞納者が増えるなかで、払える保険料にしていくため、実態に即した減免制度が必要です。資格証明書も『面談のうえで』などを堅持させ、機械的な発行をさせないなどの取り組みが重要です」と話します。