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【空港】2002.10.01-10.07の動き

●中部国際空港の開港を1か月程度前倒しした場合、閉鎖が早まる名古屋空港ターミナルビルの減収が13億円程度に上ることが1日、愛知県の試算で明らかになった。
 県などでつくる第3セクター「名古屋空港ビルディング」が運営するターミナルビルの年間収入は、2001年度で160億円。空港施設の使用料や店舗の賃貸料などが主な収入となっている。中部国際空港の開港時期は当初、2005年3月19日が予定されていたが、愛知万博の開幕(3月25日)と接近しているため、2月に前倒しする検討が進められている。

●愛知県の中部国際空港建設工事に絡む漁業補償で、県企業庁が1999年、地元の常滑市内の2漁協に対し、補償費に支払う必要のない3億円を上乗せして支払った疑いがあることが2日、関係者の話でわかった。名古屋地検特捜部もこうした経緯を把握しており、補償交渉に当たった当時の県首脳らの背任容疑での立件も念頭に捜査を進めている模様。
関係者によると、不正な上積みを受けたとみられるのは常滑漁協と鬼崎漁協。2漁協は、同市が91年から96年にかけて実施した常滑港埋め立て事業で、常滑が21億円、鬼崎が3億9000万円の漁業補償費の支払いを受けたが、これとは別に、当時の市長(故人)との間で常滑2億円、鬼崎約1億円の「裏補償」を受ける約束を交わしていた。しかし、市長の交代などもあり、裏補償の支払いはその後約8年、先延ばしにされていた。
2漁協の幹部は、98年に同空港の漁業補償交渉が始まると、建設に反対する一方で、補償交渉の相手方となった県に、同市の「積み残し金」3億円を支払うよう強く要求した。 同空港は愛知万博までに開港することが決まっていた。関係者によると、県側は交渉長期化で着工が遅れることを懸念、県企業庁が開発を担当した空港対岸部に、市の埋め立て地が一部重なっていたこともあって、本来は県が負担すべきでない3億円を空港建設の漁業補償の中に盛り込むことで漁協を納得させたという。
県が99年3月に初めて提示した補償額は、空港会社の負担分も合わせ、常滑が125億円、鬼崎が38億円だったが、こうした経緯もあって、最終的に同年7月に同意された額は、常滑138億8000万円、鬼崎60億6000万円につり上がった。漁業補償額の算定方法は、魚種や漁獲量などに応じて国の基準が決められているが、県は漁獲量を水増しするなどの操作をして、3億円を上乗せした疑いが持たれている。算定や交渉を担当したのは、98年4月に県企画部内に事務局が設けられた漁業調整推進本部。実質的な責任者は企画部を統括していた当時の県首脳で、交渉の経緯についても推進本部長から報告を受けていたという。元県首脳は「はっきりした記憶はないが、補償額の上乗せなどはできるはずがない」と話している。
一方、常滑漁協の組合長は「2億円の口約束は前の市長との間であったが、空港補償には含まれていない」と否定している。

●中部国際空港の漁業補償に支払う必要のない3億円が不正に上乗せされたとする疑惑で、常滑市の石橋誠晃市長は2日、市が鬼崎漁協と「裏補償」を約束した確約書があった事実を認めた。同市はこの疑惑に絡み、今年6月、名古屋地検特捜部から関係資料の提出を求められたが、この確約書は提出されず、直後に廃棄されていた。
石橋市長によると、確約書は、前市長が鬼崎漁協の組合長に対し、正式な漁業補償とは別に、1億600万円を支払うことを約束した内容。同市の公印が押された公文書だった。 補償の対象となった91年の工事は、同市の下水道処理場用地などの埋め立てで、一部は空港用地とも重なっている。妥結額が漁協側の要求に見合わなかったことなどから、漁協の幹部から将来の支払いの確約を求められたという。
石橋市長は、確約書の存在を市長就任翌年の92年に知り、支出には応じられないとして、県に解決を依頼した。空港工事の補償交渉が妥結した後、鬼崎の組合長と口頭で廃棄することを申し合わせたが、実際には、市役所内に保管されたままになっていた。
確約書は、特捜部から関係資料を任意提出するよう要請のあった6月20日、補償交渉を担当していた用地課で見つかったが、職員がその日のうちに独断で廃棄したという。石橋市長は、「地検からの要望と違う書類で、市にとっても必要ないと判断したようだ。証拠隠滅と疑われるかもしれないが、隠すつもりはなかった」と話している。
石橋市長は、「前市長と常滑の組合長の間でも2億円を支払う約束をしていたと聞いているが、市では払っていない」としており、2漁協と裏補償の約束があった事実を認めている。

●中部国際空港工事の漁業補償に絡み、地元2漁協への補償額が計3億円不正に上乗せされたとする疑惑で、愛知県漁業調整推進本部が漁協側との交渉過程の際、内部で定めた補償金の支払い限度額を億単位で上げていたことが3日、同本部の関係者の話でわかった。支払い限度額は、国の基準にのっとり漁獲高や船の維持費などを基に算出されるが、同本部では、漁協の要求に沿って簿外の売り上げを水増しするなどの操作を行っていた。担当者の裁量で数字を動かせる漁業補償の性格が露呈した形で、こうした不透明さが3億円の上乗せも可能にしたとみられる。

●中部国際空港工事の漁業補償に絡み、地元2漁協の補償額が計3億円不正に上乗せされたとする疑惑で、上乗せは、補償金算定や漁協との交渉を担当した愛知県漁業調整推進本部ではなく、県上層部の判断で実行された可能性が高いことが4日、関係者の話でわかった。上乗せを了承したとみられる元県首脳は、当時、同本部を統括する立場にあったほか、実際に補償金を負担する県企業庁にも影響力を持っていた。上乗せが図られた時期は、2漁協の強い反発で交渉が暗礁に乗り上げ、開港スケジュールにも影響が出かねない状況になっており、背景には元県首脳の「政治判断」があったとみられる。

●中部国際空港の漁業補償をめぐり、県企業庁が常滑市内の2漁協に不正な上積みを行ったとされる疑惑で、空港建設に反対する個人、団体でつくる「中部国際空港建設の見直しを考えるネットワーク」(中川武夫代表世話人)は2日、真相解明を求めて知事、企業庁長あての申し入れ書を提出。文書で回答を求めた。
申し入れでは「報道が事実なら県税の不正使用で断じて許せない。補償根拠を県民に明らかにせず密室で交渉を進め、空港建設を県民不在で強引に進めた結果だ」とし、疑惑に関して「司直に任せず県独自の真相究明を」と要求。
空港などの建設中止も求めた。応対した県知事公室は「(疑惑は)事実かどうか分からない。企業庁や航空対策課にも趣旨を伝える」とした。

●常滑沖に建設中の中部国際空港の漁業補償をめぐり、県企業庁が常滑市の2つの漁協に3億円を不正に上乗せしたとされる疑惑で、同市議会野党会派の佐々木志津江(共産)、杉江節子(清政会)両氏は3日、疑惑に関連する資料の公表などを石橋誠晃市長に申し入れた。申し入れでは、問題の経過を直ちに市議会へ報告し、疑惑に関連する資料の公表を求めるとともに、今後の対応をただしている。また、片岡勝城市議会議長に対しても、全員協議会を開催して市側から直接説明を受けることや、事実解明のため地方自治法に基づいた調査機関の「百条委員会」を設置するよう近く申し入れる。

●中部国際空港会社は2日、旅客ターミナルビル内に入る商業施設の概要を発表した。メーンフロアとなる4階には、宿場町や西洋の路地をイメージしたゾーンを配置して、郷土色や国際色を出すよう演出する。

●中部運輸局と鉄道事業者、関係自治体などでつくる「中部国際空港アクセス利便性向上対策協議会・鉄道部会」(部会長・奥野信宏名古屋大総長特別補佐)の5回目の会合が3日、名古屋市中区の同運輸局であり、鉄道アクセスの拠点駅となる金山総合駅について、JR東海と名鉄の連絡改札口を新設することを申し合わせた。来年度から改修を始める。
申し合わせによると、現在、JR改札口の南側にある商用スペースを改装。名鉄、JRの連絡改札口を設け、コンコースへ出ないで両方のホームから相互に乗り換えられるようにする。併せて、名鉄駅ビルを増築し、商用スペースにある店舗を移転させる。改修により、両ホームの移動は時間、距離とも半分程度に短縮されるという。また、名古屋市営地下鉄についても地上への移動がよりスムーズにできるようエレベーター3基、エスカレーター1基を増設する。身障者対応トイレや誘導用ブロックの設置など全体にバリアフリー化を図る。金山総合駅には現在、中部国際空港への鉄道アクセスとなる名鉄常滑線のほか、同名古屋本線、JR東海道線、同中央線などが乗り入れている。名鉄、JRの改札口はコンコースで分離されており、新空港開港による航空旅客増に伴い、混雑防止や利便性の向上が求められていた。昨年2月の前回会合で、両改札の乗り継ぎ簡略化が議題に上り、名鉄、JR東海で検討を進めていた。今回の改修でハード面での懸案は解消されるため、今後、鉄道各社の共通カードの導入などソフト面での対策を検討していく。

●中部国際空港開港後、小型機専用空港に衣替えする名古屋空港の在り方を考える県の「基本計画検討委員会」の初会合が4日、県庁で開かれた。今年度中にあと2回、会合を開き、検討結果をまとめる。
初会合では、県側が防災拠点機能などを盛り込んだ小型機空港の考え方を説明。委員からは「国際的な防災拠点としての機能も必要だ」「新都市型空港、シティーエアポートといった分かりやすい呼び方にすべきだ」などの意見が相次いだ。

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