政策

2月補正及び2011年度愛知県予算編成にあたっての重点要望書

愛知県知事 神田 真秋 様

日本共産党愛知県委員会
委員長 岩中 正巳

08年のリーマンショック、円高から始まった経済危機やデフレ経済のなかで、大企業の生産は「V字」回復をはたし、利益を急増させていますが、県民の暮らしと営業は、未曾有の危機的状況にあります。

常用労働者の賃金指数、完全失業者数、新卒就職内定率や有効求人倍率、生活保護世帯数や就学援助児童数、診療制限病院数、自殺者数、企業の倒産件数などの各種の数字からも、県民の雇用・暮らし・営業が脅かされている実態が鮮明になっています。

民間の賃金は、この1年間で平均23万7千円も減り、過去最大の落ち込みとなっています。多くの中小企業から、「大不況にくわえて急激な円高で、いよいよ立ち行かない」との悲鳴が聞こえてきます。農家からは、米価の大暴落で、「血の気が引いて、みんな真っ暗な顔だ。とても生活ができない」などの声があがっています。

新卒者の就職難は「超氷河期」といわれる深刻な事態です。学校を卒業した若者の社会人としての第一歩が失業者という社会でいいのか、社会のあり方、政治の対応が厳しく問われています。

県民1人あたりの国民健康保険料(税)は平均で9万7千円(2008年度)。高すぎる国保料が払えず、保険証が取り上げられ、命を落とす悲劇が広がっています。「保険あって介護なし」と言われるように、介護施設への入所待機者が急増しています。

愛知県は10月22日、平成23年度予算編成方針(副知事依命通達)を発表しました。多額の財源不足を理由に、「政策的経費は原則30%の削減」を打ち出していますが、県民各界各層から県政に対する生活応援を求める声が沸き起こっています。

日本共産党愛知県委員会は、愛知県が、2月補正及び2011年度愛知県予算編成にあたって、切実な県民の状況を正面から受け止め、「住民の福祉の増進」(地方自治法)を県政の中心に据えて、県民のいのちと暮らし、営業を守る防波堤の役割を果たすよう、以下の点を強く要望いたします。

 

 

【緊急の対策を求める要望】

2011年度当初予算を待たず緊急に執行できるよう、2010年度予算の予備費や2月補正で対応するよう要望いたします。

  1. 地域経済の浮揚・雇用拡大に即効性ある住宅リフォーム助成制度を創設すること。
  2. 下請製造業を守るため、工場賃借料、水道光熱費(特に、工業用電力基本料金)、機械設備のローン、リース代など固定費の補助制度を創設すること。
  3. 高校生・大学生・青年の就職支援策を緊急に強化すること。
  4. 再び「派遣村」が再現しないように、失業者に対する生活支援、住居確保、雇用促進に取り組むこと。
  5. 市町村の国民健康保険料(税)の引き下げ、減免の拡大、医療費本人一部負担の減免などを指導するとともに、抜本的な財政支援を行うこと。
  6. 療養病床の廃止・削減計画を白紙撤回し、特別養護老人ホームなど介護施設の増設をすすめ、入所待機状態を解消すること。
  7. 日本の農業の壊滅、経済と国土の荒廃につながるTPP(環太平洋連携協定)への参加に反対するとともに、参加しないよう政府に働きかけること。
  8. 認可保育所を増設し、つめこみ保育をやめさせるとともに待機児童をなくこと。
  9. 子宮頸がん・肺炎球菌・ヒブワクチンの接種を全額公費・現物給付方式で行うよう、市町村を支援すること。

【予算編成の基本について】

  1. 福祉・医療・教育など、暮らしに直結する事業の予算は、削減を行なわず充実すること。
  2. 経済政策の基本を外需依存から内需主導へ転換すること。
  3. 大型開発優先から、暮らし・福祉、中小企業応援、環境保全優先に切り替えること。
  4. 憲法9条を生かし、核兵器廃絶のイニシアチブを発揮すること。

【具体的な要望】

(1)安定雇用と人間らしい労働条件の確保

  1. 高校生・大学生・青年の就職支援策を緊急に強化すること。(再掲)
  2. 大企業に雇用への社会的責任を果たさせ、無法な「非正規切り」やリストラ、雇用破壊をやめさせること。県政の労働行政の軸足を企業の労働力確保・流動化・規制緩和から労働者の権利擁護・労働法制の強化の側に移すこと。
  3. 登録型派遣は原則禁止し専門業務にきびしく限定、製造業への派遣の禁止を柱とする労働者派遣法の抜本改正を国に求めること。
  4. 知事と県政は、「雇用は正社員が当たり前」の流れをつくる先頭に立ち、トヨタなどの大企業や経済団体にたいして正規雇用の拡大を働きかけること。
  5. 残業規制、有給休暇の促進を強力に進め、ワークシェアリングで雇用拡大を図ること。
  6. 雇用保険を抜本的に拡充、失業給付を受けられない失業者などへの支援など、失業者への生活援助を抜本的に強化すること。
  7. ワンストップサービスを継続して行うこと。
  8. 介護、医療、保育など社会保障の分野や教育・環境・農業・林業などの分野で雇用創出を行い、再就職支援にとりくむこと。また、長時間・過密労働を是正して、過労死を根絶するとともに新たな雇用を創出すること。
  9. 社会福祉法人などの介護関係職員の処遇改善を緊急に働きかけること。
  10. 希望するすべての失業者に職業訓練の機会を提供するとともに、技術や技能、資格を取得できるように職業訓練を充実すること、相談体制の整備などを強化すること。
  11. 再び「派遣村」が再現しないように、失業者に対する生活支援、住居確保、雇用促進に取り組むこと。(再掲)
  12. 緊急雇用創出事業基金事業の条件改善と執行を早め、新たな雇用の創出を図ること。
  13. 最低賃金の大幅な引き上げ、公契約条例の制定などで「働く貧困層」をなくすこと。

(2)県民のいのちとくらしを守る対策

  1. 75歳以上の高齢者を差別する後期高齢者医療制度は廃止を求めること。また、国民健康保険の広域化や高齢者を別枠会計で処理する新構想に反対すること。
  2. 入院・通院とも義務教育終了前の子どもの医療費、75歳以上の高齢者の医療費を無料化すること。
  3. 市町村の国民健康保険(税)の引き下げ、減免の拡大、医療費本人一部負担の減免などを指導するとともに、抜本的な財政支援を行うこと。(再掲)
  4. 失業や経営難などで生活に困っている人から「滞納」を理由として国民健康保険証を取り上げないよう市町村を指導して、「無保険状態」を無くすこと。
  5. 公立病院の縮小・廃止を中止して地域医療を守るとともに、緊急に医師・看護師不足を解消し、医療体制をたて直すこと。
  6. 市町村の妊婦及び産婦検診に県費助を行い、健診内容を充実させること。
  7. 経済的理由で介護を受けられない人をなくすため、介護保険料・利用料を減免するなど、市町村を支援すること。
  8. 療養病床の廃止・削減計画を白紙撤回し、特別養護老人ホームなど介護施設の増設をすすめ、入所待機状態を解消すること。(再掲)
  9. 国に障害者自立支援法の廃止を求め、「応益負担」を即刻撤廃すること。また、障害者福祉施設で働く労働者の賃金を大幅に引き上げること。
  10. 障害者差別をなくす条例を創設すること。
  11. 福祉施設・作業所への報酬の日払い制度をやめ、大幅に引き上げること。
  12. 県独自の障害者支援手当を改悪せず、増額すること。
  13. 住所の有無、年齢などを理由にした生活保護申請の門前払いをやめ、当座の所持金のない人には即日で保護決定を行うこと。
  14. 生活保護の老齢加算の復活を国に働きかけること。
  15. 無料低額宿泊所やこれに準ずる無届施設について、生活保護費の天引き、劣悪な住環境など「貧困ビジネス」といわれる事態を根絶すること。
  16. 巡回バス・循環バスを支援し、住民が利用しやすいように改善拡充すること。
  17. 防災対策、被災者支援制度の拡充など災害対策を強化、多数が利用する施設・歩道・公共交通機関の駅などのバリアフリー化、「空き交番」の即座解消など、防災、安全のまちづくりをすすめること。
  18. 消費税は増税せず、食料品非課税や免税点引き下げを国に求めること。

(3)安心して子育て・教育ができる社会に

  1. 残業規制の強化など長時間労働の是正、育児休業制度の改善、妊娠・出産にともなう不当な退職や不利益取扱いをなくすこと。若い世代に、安定した雇用を取り戻すなど、子育てしやすい働き方、賃金・労働時間を保障すること。
  2. 保育の最低基準の緩和・改悪を止め、行政の公的責任を明確にして、認可保育所を増設し、待機児童を解消すること。(再掲)
  3. 妊産婦検診は、全県で産前14回、産後1回なるよう、市町村に財政支援をすること。
  4. 希望者全員が入所できるよう学童保育を拡充すること。
  5. 保育料、幼稚園授業料の軽減をはかること。
  6. 「特区」制度による保育・子育ての「新システム」に反対すること。
  7. 保育所給食は自園調理を基本とするとともに、民間委託をしないよう市町村を指導すること。
  8. 市町村が行っている「就学援助」について、対象の拡大、手当額の引き上げを支援すること。
  9. 国の計画に先行して「30人以下学級」を実施すること。
  10. 教員の増員や臨時職員の採用を進め、教員の劣悪な労働環境を改善すること。
  11. 県は昨年、私立高校生授業料補助金総額を激減させたが、増額して公立高校生と同じように授業料を無償化すること。
  12. 高校生への無利子の奨学金制度を拡充すること。就学が困難な生徒・学生のため、返済不要の「給付制奨学金」を創設すること。
  13. 養護学校のマンモス状態を解消するとともに、不足している特別支援教育・障害児教育を充実させること。
  14. 学校給食を無償とすること。
  15. 県立・市町村立学校の耐震改修を促進すること。
  16. 高等学校の普通教室の空調化を実施すること。
  17. 「全国いっせい学力テスト」は中止、抽出調査に改めるなど、競争とふるいわけの教育を根本から是正するよう、国に求めること。

(4)中小企業の経営を守る対策

  1. 地域経済の浮揚・雇用拡大に即効性ある住宅リフォーム助成制度を創設すること。(再掲)
  2. 下請製造業を守るため、工場賃借料、水道光熱費(特に、工業用電力基本料金)、機械設置のローン、リース代など固定費の補助制度を創設すること。(再掲)
  3. 地元業者を大切にし、雇用を増やす「中小企業振興基本条例」、地元中小企業の仕事を増やす「公共調達基本条例」を制定すること。
  4. 中小企業・小規模業者に対する金融機関の貸し渋りをやめさせるとともに、融資対象業種の拡大、返済猶予、利子補給、全額公的信用保証など、県の制度融資と信用保証制度の改善で資金繰りを支えること。
  5. 違法な「下請切り」への指導監督を抜本的に強化し、直ちにやめさること。
  6. 家族の労賃を必要経費と認めない所得税法56条の廃止など、中小企業や小規模業者を育てる税制や中小企業減税を国に求めること。
  7. 大型公共事業に偏重した施策を見直し、小規模・生活密着型、福祉型の公共事業への転換をすすめること。
  8. 中小企業向け官公需発注比率を引き上げるとともに、“ダンピング競争”を防ぐため、積算単価の適正化をはかるなど、入札制度を改善すること。
  9. 大型店の出退店を規制し、地域の商店街の振興をはかること。

(5)農林漁業の再生のために

  1. 日本の農業の壊滅、経済と国土の荒廃につながるTPP(環太平洋連携協定)への参加に反対するとともに、政府に働きかけること。(再掲)
  2. 安心して農業にはげめるよう価格保障・所得補償制度を、また、漁業者が総行を維持できるよう「調整保管」などの所得保障を国に求めること。
  3. 農林漁業の担い手を育成し、後継者確保のために就業援助を強めること。
  4. 地元木材の利用拡大や森林資源を活用して仕事を起こすこと。
  5. 都市農業で生産緑地の指定を拡大し相続税猶予の条件緩和、また、中山間地農業で直接支払い制度の継続を国に求めること。
  6. 異常気象などによる策物被害に対する十分な補償を支援すること。
  7. 農業者・消費者の共同を広げ、「食の安全」と地域農業の再生をめざすこと。
  8. 学校給食に地域の農水産物を多く取り入れる地産地消を推進すること。
  9. 狂牛病の全頭検査(BSE対策)を継続すること。

(6)環境対策の強化

  1. 2020年までに温室効果ガスを30%削減する中期目標を設定するとともに、最大の排出源である産業界との削減目標を明記した公的削減協定の義務付けなど、実効のある排出量削減施策を推進すること。
  2. 太陽光など、自然エネルギーの活用を大幅に拡大すること。
  3. 風力発電立地を環境影響評価の対象とすること。
  4. 汐川干潟・六条潟などの埋め立て計画を中止するなど、伊勢湾・三河湾の環境保全・復元に努めること。
  5. 自衛隊機が離発着する県営名古屋空港の騒音対策を強化すること。
  6. 絶滅危惧類に指定されているサシバ・ミゾゴイの営巣が確認されるなど、重要な里山である豊田・岡崎地区のトヨタ研究開発用地造成事業は中止すること。

(7)大型開発を中止し、財政の無駄をなくす

  1. 徳山ダムに続く木曽川水系導水路の建設は、水余りの状況下で、無駄に無駄を重ねる事業であることから撤退し、国に中止を求めること。
  2. 自然破壊など極めて問題が多い設楽ダム建設の中止を国に求め、関係地元住民の生活支援を行うこと。
  3. 中部空港第2滑走路や西知多道路の建設推進をやめること。
  4. 大企業に対する法人二税の超過課税の税率を引き上げること。

(8)市町村自治の強化を

  1. 市町村の貴重な財源となっている単独補助金を削減しないこと。
  2. 道州制導入とさらなる市町村再編を進めないこと。
  3. 合併した自治体に対しては、合併前の旧自治体単位で市民の声を生かせるように、住民自治の仕組みを拡充すること。
  4. 消防力の低下につながる「消防広域化」を市町村に押し付けず、消防・防災の強化のための援助を強化すること。

(9)県民の期待に応える県組織を

  1. 住民サービスの低下などの問題が指摘されている民間委託、指定管理者制度、PFIなどの手法を改めること。
  2. 正規職員の削減をやめ、正規職員を増員すること。また、嘱託員など非正規職員の処遇を大幅に改善すること。
  3. 保健所、福祉相談センターや児童相談センター、女性相談センターなど県民サービス機関の専門職を増員すること。
  4. 生活困窮者を救援できるよう生活保護行政を拡充し、ケースワーカーを増員すること。
  5. 尾張部・三河部に住まいを失った失業者らの一時保護所や臨時宿泊所を設置すること。

(10)平和行政の推進

  1. 県営名古屋空港を使用する航空自衛隊空中給油機の撤去を求めること。なた、航空管制塔の移設など基地機能強化に反対すること。
  2. 自衛隊機のタッチアンドゴー、複数機連続飛行、上空での旋回・訓練飛行など、危険で生活環境妨害の飛行を中止するよう申し入れること。
  3. 名古屋港に軍用艦船が入港しないよう求めること。特に、核兵器不搭載の証明がない米軍の艦船の寄港は認めないこと。また、県営名古屋空港の米軍機使用を許さないこと。
  4. 「あいち・出会いと体験の道場」などをつうじた中学生らの自衛隊体験・見学を行わないこと。
  5. 今日の新たな情勢に応じ、県は「愛知県非核平和宣言」を行い、核兵器廃絶を世界に呼びかけること。
  6. 憲法9条を生かす行政を重視し、「国民保護法」など有事法制に基づく戦争体制づくりはやめること。