愛知民報

【13.11.10】愛知県地方税滞納整理機構 生存権侵す取り立て 実は権限ない任意組織

 
 愛知県地方税滞納整理機構。滞納になっている個人住民税、固定資産税、国民健康保険税などの取り立て専門機関です。県主導で2011年に県内の6地方に設置され、県と関係市町村が参加しています。機構による問答無用の強引な取り立てが社会問題になっています。その横暴とたたかっている愛知県商工団体連合会の服部守延副会長(58)に聞きました。

人権侵す

 ―機構の取り立てに、人権無視の声が出ています。

 機構が設立されてから、県内の民主商工会(民商)に、「市町村で税金の分割納付を認めてもらっていたのに、機構から一括払いを求められて困っている」という相談が寄せられるようになりました。
 「差し押さえが前提、少額分納には応じない」というのが機構の基本方針です。「差し押さえ先にありき」で、給与や年金、児童手当を差し押さえるといった生存権侵害の事例も発生しています。

法的根拠ない

 ―機構にそんな権限があるのですか。

 ありません。愛知県の機構は法律や条例にもとづいていない任意組織です。県の要綱で設置されているにすぎません。市町村は機構から脱退できます。
 県は機構自体には法的な責任も権限のないことを認めています。法的根拠のない機構はすぐなくすべきです。

「相互併任」

 ―機構自体は権限がないのに、なぜ取り立てできるのですか。

 県知事と市町村長は機構に派遣している職員に徴税吏員証(身分証明書)を相互に発行しています。ある市の職員が別の市の納税者を呼びつけて徴収できる仕組みです。相互併任方式といいます。
 任意組織の機構自体は行政文書の発行ができません。納付書や領収証も機構ではなく、市町村長名で発行されます。

?機構送り?

 ―“機構送り”とは。

 市町村が滞納整理の事務を機構に移すことです。市町村から機構に移管される滞納額の基準は、市で50万円、町村で30万円です。額だけが基準ですから、市町村が丁寧に相談し、分納しているケースでも、額が基準を超えるとその時点で悪質になってしまう。

納税者の権利

 ―生活実態や生存権を無視した取り立てとたたかうには。

 税金が払えないときに、生存権、財産権を守るために使える権利として、「納税の猶予」(国税)、「徴収の猶予」(地方税)という制度があります。これを使えば、差し押さえはできなくなります。
 「生活と事業の現況及び実情の範囲を越えて納税義務の履行を強制されない」という納税者の基本的権利を守らせましょう。 

豊明市、機構から撤退 前山市議、民商の奮闘実る

 
 豊明市は9月30日、機構からの撤退を表明しました。市から機構に派遣していた職員を同日付で引き揚げ、機構に送っていた案件も市が徴収業務を行うことになりました。
 日本共産党の前山美恵子議員と名古屋南民商との連携した活動が実を結びました。
 前山議員は「税を真面目に分納している人も機構送りになり、なかには生活保護すれすれの生活をしている人もいました。私は議会で、徴収の責任は市にあることを認めさせ、機構参加のデメリットを具体的に示しました」と振り返ります。
 南民商の平岡充典事務局長は「豊明市が徴収事務に責任を持ち、親身になって滞納相談を行うよう繰り返し要望し、きちんと分納している人は機構に送らないと約束させました」と話します。
 今後の課題について前山議員は「徴収事務を市が行ったとしても、強権的な取り立てにならないよう監視の目を怠ってはなりません」と強調しました。