愛知民報

【13.02.10】生活保護引き下げ 賃下げ圧力に 

「生活保護改悪で苦しむのは労働者全体だ」―。安倍自公政権が計画する生活保護の基準額引き下げが最低賃金の引き下げにつながるおそれがあるからです。最賃生活を体験した愛知の若者は、生活保護基準の大切さを痛感しています。

最賃体験「あんな酷い生活、二度と…」

 愛知県の最低賃金(時給758円)でまともに生活できるか。愛知県労働組合総連合(愛労連)は1日、最低賃金で1カ月間の生活を体験する取り組みをスタートさせました。

 時給758円で1日8時間、ひと月22日就労で月収13万3408円。ここから税金と社会保険料、家賃相当額を差し引いた6万3000円で生活体験するものです。

 体験では毎年、脱落者が続出しています。

 昨年に体験した自治労連愛知県本部の安藤剛さん(29)は5000円の支出オーバーに。「家で飼う猫のえさ代よりも自分の食費が安いこともありました。飲み会は友人に奢ってもらいましたが、突然歯医者にかかり、靴に穴が開いて赤字に。健康でも文化的でもありません」と言います。

 生活保護切捨ての動きに安藤さんは「保護基準と最賃は法的に連動しています。私の体験からも生活保護を切り捨てたら生きてゆけないと言える。政府のやり方は国民を見捨てるものです」と怒りをぶつけてきました。

 別の体験者は「外食できず、映画もダメ」「あんな酷い生活は二度としたくない」などと語りました。

 スタート集会で行動提起した吉良多喜夫・愛労連事務局長は、こう力を込めました。
 「安倍政権による生活保護改悪が強行されれば最賃も引き下げられ、国民生活全体が追いつめられる。労働者の生活権保障の課題として、生活保護の切り下げ阻止に取り組む」

愛知県弁護士会が批判「福祉社会を放棄」

 愛知県弁護士会は昨年11月16日、国会で民主・公明・自民が生活保護見直しを含んだ「社会保障改革推進法」を強行可決したことをうけ、生活保護基準の引き下げに断固として反対するとの和義会長の声明を発表しました。
 同声明は、基準引き下げによる生活困窮者の大幅増加や、同基準が賃金、医療・介護保険料、就学援助、非課税に連動し、これらの施策に影響を与えると指摘。
 保護基準の引き下げは「憲法25条の保障を蔑ろにする」「福祉国家であることを放棄するに等しく、断じて許されない」ときびしく批判しました。

生活保護 基準の 影響を 受ける制度

最低賃金法

 【第9条3項】 労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮する。

 【就学援助、国保の保険料減免・窓口負担の減免】自治体により生活保護基準の1・1倍、1・3倍などを基準としている

 【住民税の非課税限度額】
 【住民税の非課税限度額に連動するおもな制度】

・高額療養費の自己 負担限度額
・保育料
・介護保険料の軽減 (65歳以上)

社会保障改悪計画

 【生活保護】 生活扶助基準を3年間で7・3%削減。生活保護法改悪で指導・調査権限強化、「就労指導」強化などによる利用制限。
 【介護】 利用料引き上げ、サービス削減などの制度改悪法案を来年提出。要介護認定者を2025年までに11年比で3%削減。軽度者の施設利用抑制。
 【医療】 70~74歳の窓口負担を1割→2割。風邪薬などの患者負担引き上げ、医療保険範囲の縮小、終末期医療の見直し、病院追い出しにつながる入院日数の短縮、外来患者を25年までに11年比で5%減らす、受診時定額負担制度の導入。
 【年金】 10月から3年間で2・5%削減、「マクロ経済スライド」による毎年0・9%引き上げ、支給開始年齢の65歳→68~70歳への引き上げ検討。

貧困・格差解消を 日本弁護士連合会 前会長 宇都宮健児さん

 
 前日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏は1月27日、名古屋市内で講演したなかで、安倍自公政権がねらう生活保護制度改悪に言及。「生保受給者が増えているのは貧困・格差の広がりの結果です。基準引き下げは本末転倒です。引き下げは最低賃金や地方税、就学援助などにも連動し、受給していない低所得者に大きく影響します。富裕層に対する課税強化など、所得再配分施策こそ必要です。生保改悪や消費税増税に反対する運動を強めていきたい」と語りました。