愛知民報

【12.03.11】愛知県は福祉医療を守れ 愛知県障害者(児)の生活と権利を守る連絡協議会副会長 上田孝さん

障害者の命守る制度 「個人責任」にすりかえる後退

 
 私の疾病は生まれついての「多発性骨端異形成症」。この20年疾病からくる脊柱管狭窄症などの進行でシビレ、痛み、排尿障害のため、毎月の診察、毎週のリハビリ、毎日の薬は欠かせなくなっています。

 障害者にとって、愛知県の福祉医療(医療費無料)制度は、「障害」を「個人責任」から「社会で支えるもの」に変えてきた命を守る制度です。とくに所得制限がない愛知の障害者医療助成制度は、全国一すすんだ制度です。

 関節リウマチによる障害と歩んできた宮田鈴枝さん(愛障協顧問・82歳)は「この制度があったからこそ、生きてこられた」と言います。

 しかし今、大村秀章県政は、福祉医療制度に一部負担金導入を検討しています。これを許してはなりません。

 1973年4月に開かれた、障害者の生活と権利を守る愛知県民集会は「障害のゆえに病気にかかりやすいが、収入の無い中、お金がかかりすぎて病院にいけない」と、障害者医療無料化の要求をかかげました。この月に名古屋に誕生した本山革新市長が「障害者対策はお恵みや慈善ではなく、憲法に保障された権利として実現したい」と発言。愛知県は8月から市町村の心身障害者医療費助成制度に補助をはじめ、名古屋市は10月に同制度を開始しました。

 その後の40年間は、制度を守り拡大させる障害者運動・社会保障運動と、国や県の「行革」とのたたかいの連続でした。とくに県は2000年に一部負担金導入を強行しましたが、市町村の無料継続や医師会の反対もあり、翌年度以降は撤回に追い込みました。
 県は今回の福祉医療制度の見直しで、00年の失敗を繰り返さないよう、「市町村、医師会等の関係機関との協議、調整を図りながら行う」とし、「12年度に協議を終え見直し案の作成、14年実施」の工程を示しています。

 障害者の多くは、医療とは一生涯切り離せません。しかし、医療費負担=通院費(三河山間部や離島から病院への交通費など)・入院給食費・差額ベッド代など=の増大は、必要な医療を制限せざるをえないのです。一部負担金導入はこうした傾向に拍車をかけ、障害を「個人責任」にすりかえるものです。

 福祉医療制度の後退を許さず、「障害があっても健康に生きていく」ための医療の保障を拡充するために力を合わせて取り組みたいと思います。

県の福祉医療(医療費無料)制度 

 子ども、障害者、母子父子家庭、後期高齢者(寝たきり・認知症など)を対象とする4つの医療費助成制度があり、11年度予算の対象は合計84万3849人。県と市町村が2分の1ずつ補助し、医療保険の患者負担分を無料にする。県の助成基準を超す市町村の単独助成制度では、所得制限や患者一部負担のケースもある。