愛知民報

【11.11.27】「TPPにとどめを」 田代洋一・大妻女子大学教授が講演 

アメリカに従わされる 規制緩和・撤廃で国民生活壊れる

 
 経済学者の田代洋一氏(大妻女子大学教授)を招いた「TPP(環太平洋連携協定)にとどめを刺す講演会」が18日、名古屋市で開かれました。「ほっとブックス新栄」など団体や個人で構成する講演会実行委員会が主催しました。

 田代氏の講演の一部を紹介します。

 TPP参加問題の本質は、アジア太平洋の米中対立時代における日米同盟強化です。このためアメリカは経済的にも政治的にも、日本をTPPに抱き込もうとしています。

 アメリカの失業率が改善せず、若者のデモが広がる中で、オバマ大統領の支持率は50%を割っています。今後5年間で輸出を倍増させ、200万人の雇用を拡大しなければ、オバマ氏の再選は不可能と言われています。雇用拡大が可能な市場は日本だけです。

 アメリカがTPPに託す野望は貿易拡大、関税引き下げではありません。環太平洋における中国封じ込め作戦であり、アジア太平洋経済をアメリカ流の新自由主義、市場原理主義に再編することです。

 各国の経済主権を認めず、規制の緩和・撤廃を進め、各国でのアメリカ資本の自由な行動を実現するのがねらいです。

 現在のTPP参加9カ国に日本を加えた10カ国のGDPのうち、日米は9割を占めています。日本がTPPに参加すれば、事実上の日米2国間のFTAになり、日本はアメリカのルールに従わされることになります。

 日本とアメリカの関係で、日本はアメリカの工業関税の1・9%をゼロにしてもらう代わりに、日本農業の12・5%の関税をゼロにする。その場合アメリカが1・9%以上ドル安円高を誘導したら、工業関税の撤廃分はあっという間に取り戻され、日本農業が壊滅的な打撃を受けることになります。

 他に、アメリカがねらっている分野は、牛肉輸入制限、残留農薬基準値、食品添加物など食の安全に関する規制の緩和、混合医療の全面解禁、公的保険(共済)の民間保険並み化などの金融自由化、東日本大震災復興への外資参入につながる政府調達(物品購入、公共事業入札)自由化など、国民生活全般にかかわります。

 経済産業省の試算では、日本の自動車、電気、機械のグローバル輸出企業の利益は増えると言います。つまり“トヨタTPP”になる可能性が強いのです。輸出競争で低賃金国に対抗するために、国内労働者の非正規化・賃金引き下げがすすむことになります。日本の内需が冷え込み、不況はもっと深刻になります。

 日本の財界の思惑は、TPPの外圧を利用して、国民の命と暮らしを守るための様々な規制をなくし、自らもぼろ儲けできる体制をつくることです。

 たたかいはこれからです。国民生活全般にかかわる問題として、地域から全階層的な反対運動を盛り上げましょう。同時に、日本農業再建の道筋を明確にし、食料問題としてTPP参加反対を訴えていきましょう。