愛知民報

【11.09.18】河村名古屋市政「事業仕分け」 敬老パス・30人学級・保育あやうし 

財界プラン インフラ財源づくり 

 福祉日本一があぶない!-河村たかし市政が敬老パスや30人学級といった、名古屋の先進的な福祉や教育に「事業仕分け」のナタを振るおうとしています。連携する大村秀章愛知県知事は「行革深掘り」と称して、県営「愛知こどもの国」の廃止や市町村の福祉を支える県補助金の大削減をねらっています(本紙4日付既報)。双方のねらいは、財界が求める高速道路、空港、港湾などの大型インフラ(基盤)整備に集中投資する県・名古屋市一体の財源づくりです。
 

名古屋市「事業仕分け」の対象事業(一部)







敬老パス 財政負担増の見込み。制度のあり方を検討
公立保育所 保育料の見直し検討
小学1・2年の30人学級 国・県の35人学級と比較し、あり方を検討
中学校スクールランチ 1食当たりの価格適正化、経費節減の検討
野外学習センター 廃止を検討
生涯学習センター(16館) 民間指定管理者制度の導入検討
女性会館 民間指定管理者制度の導入検討
休養温泉ホーム松ヶ島 民間類似施設あり。施設のあり方を検討
高年大学鯱城学園 利用者負担のあり方等を検討
ランの館 廃止を含め抜本的なあり方を検討
市営住宅(278団地) 駐車料の民間との格差是正の検討
防災管理者等講習 受講料の見直しと経費節減を検討
留学生支援金給付 効果が不十分。抜本的見直しを検討



行政主導

 「事業仕分け」とは、自治体の事務事業の見直しに専門家や市民が参加し、廃止・見直し・継続などにふるい分けること。
 
 市民参加型といっても、見直しの対象や論点を示すのは行政側。

 「財政健全化」や「行政効率化」の名で、実は大型開発事業の財源確保のため、福祉・公共サービスの縮小・廃止や有料化、先進事業の後退、行政責任放棄の民営化が意図されているケースがあります。

ゆりかごから

 河村市政が今回の仕分けの対象にするのは30事業。保育料や墓園管理の民間化がふくまれ、「ゆりかごから墓場まで」の生活支援事業の見直しです。

 市が65歳以上に交付している敬老パス(地下鉄・市バス福祉乗車証)の見直しでは、交付年齢の引き上げや本人負担金の値上げが心配されています。

 教育では、教員人件費を削減するため、市が独自に実施している小学1・2年生の30人学級を国・県並みの35人学級に後退させようとしています。

 保育では、午後4時以降の保育料値上げや同時入所の第3子以降の保育料無料化の廃止、保育への企業参入に向うおそれがあります。

減税「行革」

 河村市長の看板政策の「市民税10%減税」の目的は、行革推進と企業誘致。

 2010年度に実施された市民税10%減税の実態は、「暮らしのきびしい庶民にちょっぴり、もうけている大企業・大金持ちにどっさり」の逆立ち減税でした。

 その一方、市立病院売却、国民健康保険料値上げなど、市民犠牲の「行革」が強行されました。

自治体変質

 河村市長は2009年の名古屋市長選挙では政権交代の流れに乗り「大型事業見直し」を訴えました。

 大村秀章自民党衆議院議員と連携した今年の愛知県知事選と名古屋市長選挙では、大企業誘致、大型インフラ整備、行政広域化を打ち出しました。中部財界のプランと同じ方向です。

 その財源と行政体制をつくるため、「事業仕分け」や「行革深掘り」の手法で、事業と予算の流れを住民生活支援から大企業支援へ徹底的に転換しようとしています。

このムダ削れ

 「仕分けするなら不要不急の大型事業やムダづかいを」――▽名古屋城天守閣の木造建て替え▽大企業の高層ビル建設への補助金▽中部空港2本目滑走路など需要を無視した大型開発事業▽慣例的な市議海外視察が見直すべき事業に指摘されています。

 市民が動きだしました。市民犠牲の「事業仕分け」や「財源なき金持ち優遇減税」を許さず、公的保育の維持、国民健康保険料の引き下げ、福祉・防災のまちづくりを求める運動が広がっています。

解説 中京都構想

 「中京都構想」は、大村愛知県知事と河村名古屋市長が今年2月の知事選・市長選で掲げた共同マニフェストの政策。「世界と闘える愛知・名古屋」をつくるとして、愛知県と名古屋市の権限や財源を合体し、高速道路、空港、港湾など大型インフラ(基盤)整備を推進する広域行政構想。

 「中京都」の具体的な計画を決めるのは知事・名古屋市長・大企業首脳でつくる「中京都独立戦略本部」。河村市長はこれを「愛知・名古屋株式会社の取締役会」と位置づけています。

 大型インフラ整備に財源を集中するため、「行革」や「事業仕分け」で生活予算を徹底的に縮減。自治体を「住民福祉増進の機関」から「企業利益増進の開発会社」に完全変質させる方向です。

今でも高い保育料 めいほく保育園園長 伊佐治尚美さん

 待機児童が増えている根っこに不景気にともなう収入減があります。とくに子育て世代の収入が上がっていません。お父さんの収入だけでは生活費が足らないから、お母さんも働きたいというご家庭が多いのが現状。現行の保育料も払えないという人もいます。値上げなんてとんでもない。

保育に企業はなじみません

 
 河村市政は民間保育所への株式会社参入を検討しています。これに反対し公的福祉を守る運動が始まりました(写真=保育市場化・営利化の「子ども・子育て新システム」反対署名スタート集会=9月2日)

街の活性化に逆行 年金者組合名東支部 本谷純子さん

 名古屋市の敬老パスは、高齢者が交通費を気にせずに気軽に外出して健康を管理するうえで重要です。街を活性化するという点でも貢献しています。交付年齢や、負担金の引き上げは絶対に許しません。上がれば交付を受ける人が減り、制度そのものの根幹が脅かされます。

財界向け構造改革 名古屋大学名誉教授 鳥居達生さん

 大村・河村コンビの政策の中心は、財界のための構造改革の推進だ。その証拠に高速道路や名古屋港といった巨大インフラ整備には手をつけずに、市民にとって一番大切な暮らし、福祉、教育が切り捨てられようとしている。共産党にはそういった間違った政治をただす先頭に立ってほしい。