愛知民報

【08.03.16】ピーチライナー 赤字会社清算へ 貸付金39億円つぎこみ当面戻る現金553万円

 「私が桃花台に入居した1993年頃は、ピーチライナーの利便性が大々的に宣伝されたんですよ」と話すのは小牧市桃花台ニュータウン住民のKさん(75)。

 「ピーチライナー」とは、2006年9月末に廃止された名鉄小牧駅と桃花台ニュータウンを結ぶ運行距離7・4キロの新交通システム・桃花台線のことです。

 

大きな損失

 愛知県は高度経済成長時代に、桃花台ニュータウン開発と一体で居住者の公共交通機関として新交通システムの導入を構想しました。総事業費約313億円を投じて建設されたのが桃花台線です。

 県が13億8千万円を出資した第3セクター「桃花台新交通株式会社」(社長・神田真秋知事)が運営してきました。しかし、利用者数は計画を大幅に下回り、2003年度末には累積赤字約61億円をかかえました。県は「再建不能」と判断し、桃花台線は06年9月末で運行廃止になりました。桃花台新交通株式会社は同年11月を解散し、清算手続きが進められています。

 県が同社に出資した13億8千万円は1円も戻りません。貸付金と延滞利息計39億3000万円のうち、当面、戻る見込みは現金553万円と車両基地用地の代物弁済分(鑑定評価7億5600万円)。残り約31億円は放棄されます。車両基地用地にしても「土地計画の規制がかかっており、現状では売却したとしても安い値段になる」(県担当者)。

 県民の血税を出資、貸し付けという形で第3セクターにつぎ込み、焦げ付かせてしまった県の責任は重大です。

予測はずれ

 桃花台線の2000年度の計画利用者数は1日当たり1万2392人。実績は2262人で、計画の18・3%でした。01年度には1日2182人に落ち込みました。

 木下さんは「本数は20分に1本、運賃は通しで350円、階段の昇り降り、乗り継ぎと、どの面を見ても便利さは感じませんでした。造成した当時の宣伝とは違っていましたね」と話します。

撤去も巨費

 桃花台の新交通システムは、開業からわずか15年半で廃止に。ニュータウン計画にともなう過大な利用見積もりの破たんでした。

 現在、ホーム、軌道、高架橋などは他に用途のないまま放置されています。今後、解体・撤去が日程にのぼることは確実です。解体工事にも多額の税金投入は必至。県の持ち出しは31億円の焦げ付き分だけでは済みそうにありません。