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【03.02.16】大島良満さん、西村秀一さんが語る

2月16日愛知民報

 市民税非課税の高齢世帯などの医療費を無料にしている福祉給付金制度について、松原武久名古屋市長が新年度予算案編成で8月から助成を打ち切ろうとしています。福祉給付金制度は2年前の名古屋市長選で同市長をかついだ自民、民主、公明陣営が「さらに充実させます」と公約していた施策の一つ。愛知県社会保障推進協議会顧問の大島良満さん(67)と県保険医協会事務局長の西村秀一さん(56)にその制度のしくみや歴史について聞きました。

西村 名古屋市にはこれまで68歳以上の老人医療費を無料にする制度がありました。しかし国の制度として一部負担がかかる分はこの制度では補えないのです。その部分を助成するというのが福祉給付金です。この制度で約4割の高齢者の医療費が無料になっています。名古屋市以外の県下自治体では約1割です。

 しかも、名古屋市は医師会の協力もあって窓口無料です。ほかの自治体は病院の窓口でいったん一部負担金を支払い、後からその金額を自治体に請求して払い戻しを受ける償還払い制度です。
 新年度予算案では、寝たきりや痴ほうの人をのぞく市民税非課税世帯7万8820人への給付を打ち切ります。この中には独居老人もふくまれます。

受診抑制で「重症化」も

大島 実施されれば外来は月額最高8千円、入院は2万4600円の自己負担が必要になります。
西村 県の福祉給付金制度は市町村民税非課税世帯の対象を(1)寝たきり老人(2)痴呆性老人(3)独り暮らし老人――としています。県当局は「独り暮らし老人は残す」と言っています。県より名古屋市の方が制度として後退することになります。
大島 昨年10月の老人医療費1割負担によって、低肺患者などの在宅酸素療法の自己負担が高くなりました。850円から約1万円になった人もいます。高いからやめるというわけにはいかないんです。
 しかし、現実には酸素療法を打ち切りたいという患者さんも増えています。そのうえ福祉給付金制度が改悪されれば、この不況下、受診抑制とそれにともなう重症化は大変なものになると思います。

市民運動でかちとった

大島 そもそも名古屋市では、老人医療や乳幼児医療の助成制度を市民の運動によって生み出した歴史があります。出発点は1970年に老人医療の無料化を勝ち取ったことです。
 このときは県社会保障推進協議会に結集した団体が、老人クラブや多数の市民とともに直接請求運動をおこない、1カ月で23万人の直接請求の署名を集めたんです。
 無料化の対象は75歳から出発して70歳、68歳と拡大していき、県も後追いしました。それだけ名古屋の運動というのはインパクトがあったんです。
西村 国が老人医療を無料化したのは73年です。ところが82年9月、老人医療を有料化する老人保健法が国会を通過したことで各自治体の無料制度もピンチにおちいりました。
大島 「老人医療費有料化を許すな」と82年12月に3日間、延べ250人が県庁正面玄関に座り込みました。「座り込みニュース」を発行して県民に配ると、毛布や食べ物などが差し入れられる、地元マスコミの報道を見て、座り込みの参加者が増えるなど急速に運動は広がりました。
 8日には社保協が老人医療福祉制度を守る請願署名20万人分を県議会に提出しました。このことがまたマスコミでも大きく取り上げられました。NHKの全国番組「くらしの経済セミナー/どうする福祉見直し」で私も当時の林義郎厚生大臣と1時間討論したことがあります。
西村 こうした運動で83年2月、県は所得制限をつけて医療費を無料にする福祉給付金制度を導入しました。一方、名古屋市ではとりあえず半年間無料を存続しました。次どうするかというとき、革新市政の会が無料制度を守るため83年6月27日、150人の市議会傍聴を組織しました。
大島 自治体独自で老人医療費を無料にしようとすると、国が地方交付税を減額するなどペナルティを科します。とにかく無料はだめ、1円でも多く患者から取れというのが政府の姿勢です。
西村 国との関係でたてまえとしては有料にするが、県民の抵抗で実質的に無料としたわけです。名古屋市は83年8月まで完全無料化をつづけ、84年の2月にいまの福祉給付金を導入しました。市民税非課税世帯を対象にするという成果をかちとったのは、全国的にも名古屋市くらいです。
 昨年10月から老人医療が1割負担になって在宅患者が大変困ることになりました。ところが名古屋市では、そういう声があまり聞かれない。そこで保険医協会で調査したら、在宅患者では80%が完全無料となっていました。

税金の使い方の転換を

大島 松原市長になってから福祉、医療はどんどん悪い方向で見直されています。国保世帯主8割給付、福祉給付金、敬老パスと市民の運動でかちとってきた宝をつぶそうとしています。実にけしからんことです。
西村 名古屋市の福祉給付金が打ち切られると深刻な状況がうまれます。
大島 問題の根本には、税金の取り方と使い方の問題があると思います。税金の使い方を転換させなくてはならない。大きな世論と運動を起こして福祉の後退を食い止めたいと思います。

名古屋市の福祉給付金制度

所得制限

■障害高齢者など・寝たきり・痴ほう → 本人所得が「特別障害者手当」
支給基準額以下
(所得)3,604千円
(給与収入)5,118千円
■市民税非課税世帯 → 主たる生計維持者の所得が市民税非課税
(所得)1,250千円
(給与収入)2,043千円

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