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【03.01.19】愛知県知事選 万博やめていのち・くらしに

2003年1月19日 「愛知民報」

  愛知県知事選は2月2日投票。無党派・市民派の池住よしのり候補(58)=みんなで愛知を変えよう会=は「いま万博をやっているときではない。万博をやめて県民のいのち・くらしに」と訴えます。一方、神田真秋現知事(51)=自民、公明、民主など推薦=は「暮らしの安心・安全の確保」を唱えながら、県民のいのち・くらしを犠牲に万博を推進しています。地震、病気、老後、失業などの不安をなくすため税金をどう使うかが問われています。

●地震の不安―学校耐震化は全国ワースト3

 政府の中央防災会議は昨年8月、地震による死者数(阪神・淡路大震災と同じ午前5時に発生した場合)は東海地震で8100人、東南海・南海地震では建物全壊によるものだけで7400人と想定しました。

 池住よしのり候補は「地震対策のためにすべての大型公共事業に優先して学校などの耐震診断、補強を早急におこなう」と基本政策に掲げました。「財政難のなか他都市の先進例も研究して生かしていきたい」と語ります。「住宅改造などを支援し、バリアフリーでより安全な避難所を整備する」としています。

 消防庁によると01年4月1日現在、公立の幼稚園、小中高校施設のうち、地震に耐えうるとされた施設は静岡県67・8%、三重県60・9%、岐阜県54・9%。愛知県は44・1%で全国平均46%さえ下まわっています。逆に地震に耐えられない施設のうち耐震改修未実施の棟数は52・2%(全国平均17・6%)で全国ワースト3です。

 県は昨年11月、「あいち地震対策アクションプラン」をまとめました。06年度までに208事業、総事業費約4500億―5000億円を見込んでいます。万博・空港と関連事業の県負担総額はそれを上回ります。

 阪神・淡路大震災の死者の83・7%は「圧死・窒息死」(兵庫県警)でした。「アクションプラン」では、5年間で民間木造住宅12万棟の耐震診断補助を実施します。旧耐震基準(1981年5月以前建築)の木造住宅は県内に約76万棟あり、このテンポでは30年以上かかります。

 県はようやく新年度から民間住宅の耐震改修費用の補助制度を導入します。1戸あたり最大30万円程度の助成を検討しています。しかし国土交通省の調査では、耐震補強にかかった費用の平均は約300万円。横浜市は200万円から540万円まで4段階で補助しています。

 2000年9月の東海豪雨では県内で死者7人、2250億円の被害を出しました。神田知事はそのとき、翌日の博覧会協会の理事会・評議員会の上京に備えて一宮市の自宅に帰ってしまいました。「県民の命より万博が大事か」という姿勢に批判が巻きおこりました。

公立幼稚園・学校施設の耐震改修実施ワースト10

区分
全棟数
耐震性を有する棟数
耐震改修未実施棟率(%)
静岡県
5057
3427
60.5
岐阜県
2957
1626
53.7
愛知県
6894
3041
52.2
千葉県
5503
2416
49.7
神奈川県
4340
2500
46.2
東京都
8587
4561
42.2
山梨県
1115
671
39.0
福井県
1360
632
33.1
三重県
2864
1738
32.9
群馬県
2738
1347
29.1
消防庁調べから作成(2001年4月1日現在)

●病気の不安―医療・保健の施策次々後退

 池住候補は「医療・保健・福祉の連携」「乳幼児医療制度、小児救急医療体制充実」「障害をもつ乳幼児が地域の中で専門的な医療を受けられるように従来ある地域の医療機関を充実」「低所得者、シングルマザーなどの出産費用公費負担」を掲げています。「高齢化社会にとって、在宅医療の充実が重要」としています。

 同候補は、アジア各地の村々で保健の担い手を育てるNGO(非政府組織)活動に従事。現在、国際民衆保健協議会の日本連絡事務所代表を務めるなど保健予防のベテラン。

 神田県政は、国が老人保健の対象年齢を5歳引き上げたのを機に老人医療制度の対象を段階的に68歳から73歳に引き上げます。老人医療を無料にしている福祉給付金制度も、原則として73歳になるまで受けられない制度にしました。

 00年8月には乳幼児、重度障害者などの福祉医療に一部負担金を導入。県民の反撃で撤回しました。

 県は昨年10月から医療費の無料制度を4歳未満児まで拡大しました。しかし兵庫県、東京都などさえ入院、通院とも就学前まで無料にするなど全国では愛知を上回っている都県が多くあります。県下でも88市町村のうち63市町村がすでに県の基準を上回る制度を実施しています。

 愛知県は「無らい県運動」の先陣を切り、ハンセン病患者を強制隔離にかりたてました。しかし神田知事はいまだに療養所訪問を果たしていません。

●老後の不安―特養ホームの待機者1万人

 池住候補は「365日24時間介護・介助提供を実現し、身近な地域の中に入所施設とは独立したデイサービスやショートステイ、休息一時ケア施設を民間と連携しながら整備」「移動サービスや食事サービスなど介護保険外サービスを充実させる」と訴えています。

 神田知事は99年2月の就任後、真先にやったのが高齢者や障害者など福祉関係補助金の3割カットでした。敬老祝い金は9割カット、市町村にたいするホームヘルパー派遣事業費補助、デイサービス事業運営費補助は15%削減しました。

 特別養護老人ホームの待機者が1万人を超えているにもかかわらず、神田県政は県立の特別養護老人ホーム11施設の管理を民間に委譲、渥美軽費老人ホームは廃止してしまいました。老人ホームの定員数(65歳以上人口あたり)は全国42位に低迷しています。

●失業の不安―県自体がリストラの先頭に

 池住候補は「県雇用促進・助成制度」の創設を提案。「正規採用教員の増員」「30人以下の少人数学級への早期移行」「障害をもつ人の生活支援も組み合わせた就労支援体制を充実させる」「児童相談所の児童福祉士・専門員等の増員」など雇用の促進をめざします。「女性の働きやすい環境を整えることも内容に含む子育て支援条例を制定する」としています。

 県の完全失業率は93年2・1%、96年3・1%、99年4・3%、01年4・4%と悪化の一途をたどっています。高校生の就職率も93年28・6%、99年19・3%、01年18・1%。15歳から24歳の完全失業率は8・5%と深刻です。

 障害者を雇わなければならない法定雇用率は1・8%ですが、県は昨年12月現在で1・49%。視覚障害者の梅尾朱美さん(52)=名古屋市熱田区=は「この数字には、自営業者や作業所で働く障害者の数はカウントされていない。雇用率が高いのは中小業者で大企業は低い。不況のもとで障害者の解雇も増えており、数字に現れない厳しさが進行している」と語ります。

 県は青年が手に職をつけるための高等技術専門学校7校のうち高辻高等技術専門学校と、看護専門学校4校のうち2校は05年度までに廃止。歯科衛生専門学校も廃止・民営化をふくむ見直しを検討しています。

 労働センターなど4カ所で週2回実施している夜間労働相談窓口に寄せられた相談件数は、昨年4月から11月までで34件に過ぎません。長引く不況のなか、有効な雇用対策をとってきませんでした。

 それどころか、万博、空港などに湯水のように税金を使ったあげく、財政難を理由にこの4年間で1千人以上の教員を削減し、08年度までには県職員定数を3千人削減する予定です。

 知立市で臨時教員をしている坪井秀夫さん(34)は「1年契約で翌年職があるかどうかわからない。愛知県の養護学校は全国一のマンモス校となっている。県は正規教員をもっと増やしてほしい」と話します。

井桁候補――神田予算に賛成 県民請願にそっぽ

 井桁亮候補(33)は県議任期中、知事が提案した予算案にすべて賛成してきました。まぎれもない「オール与党」議員です。

 一方で同候補は、県民の請願にことごとく反対してきました。そのおもなものは「6歳未満児までの医療費無料化」「障害者福祉関係予算の削減中止」「介護保険料の保険料利用料減免」「不況を打開し、中小業者の営業とくらしをまもる」不払い・サービス残業根絶を国に要請」「高齢者窓口負担の引き上げ中止」などです。

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