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【02.09.29】「首都機能」誘致 ゆきづまる神田県政

2002年9月29日 「愛知民報」

幻想ふりまき、巨大開発事業の目玉に
県民に計り知れぬ負担

愛知県会議員 林のぶとし

 「栃木・福島地域」「岐阜・愛知地域」「三重・畿央地域」を対象として首都機能移転先の検討をすすめてきた衆議院の「国会等の移転に関する特別委員会」はこの5月、移転先絞り込みの期限が来てもそれができず、今後の審議の具体的な方針も明らかにできない状況に陥りました。

 日本共産党は、首都機能移転は浪費型巨大開発であり中止を求めてきました。移転先選定の「先送り」は首都機能移転構想そのものの破たんを示すものです。「国会等の移転に関する法」を廃止し、移転を中止すべきでしょう。

 しかし、愛知県議会の6月定例議会で自民党、民主党、公明党など与党会派は共同で国にたいし「首都機能移転の早期決定を求める」意見書案を提出しました。首都機能移転の「早期実現」を国に強く求め、これを2005年の中部国際空港開港と愛知万博開催につづく大型開発の目玉にしようとしています。

 私は6月県議会の最終日、この意見書案にたいし日本共産党愛知県議団を代表して反対の意見をのべました。

 愛知県の神田県政は、岐阜県の梶原県政と連携し「岐阜・愛知地域」でどんな「首都機能移転」を構想しているのでしょうか。

遷都否定しながら

 1996年6月の衆議院特別委員会で、当時の橋本龍太郎首相は「国会等の移転に関する法律に基づきます検討、それは首都移転あるいは遷都を前提として行われるものではありません」と遷都を否定しました。

 ところが愛知、岐阜両県知事を代表理事とする「岐阜愛知新首都推進協議会」が今年3月に発表した「新しい日本の首都構想」では、「新首都」とうたっています。「遷都」なのかと思うとそうではありません。構想を紹介したパンフレットの表紙裏で「『新首都』とは、『首都機能の移転先となる新都市』のことです。この報告書ではわかりやすく『新首都』と表現しています」とこっそり弁解しています。

 やはり首都は東京であって、国会と最高裁判所、一部政府機関を「岐阜・愛知地域」に移し、それらを核にした新しい都市をつくるという話なのです。

 これを首都そのものができるかのように幻想をふりまき、これを起爆剤にして岐阜・東濃地域と愛知・西三河地域を舞台に、自動車道路の整備や市街地開発などゼネコン型大規模開発を推進しようとしています。

 大型公共事業にたいする国民的批判がひろがるなかで、「新首都」建設の看板は、ゼネコン型開発至上主義延命のために「羊頭をかかげて狗肉を売る」たぐいの誇大宣伝にすぎません。

移転は5万7千人

 「岐阜愛知新首都構想」の内容を見てみましょう。岐阜県の東濃地域に国会を中心にした北ゾーン、愛知県の西三河北部に最高裁判所を中心にした南ゾーンという2つの町をつくるというのです。

 北ゾーンは多治見、土岐、瑞浪、可児4市と御嵩町にまたがる丘陵地域。国会と、国会活動に関連する行政機能、大使館、政党本部などが配置されます。南ゾーンは豊田市、足助町、藤岡町、小原村にまたがる丘陵地域。最高裁判所、民間支援の行政機関として経済産業省の出先機関などが構想されています。

 2つのゾーンは20キロメートル離れています。東海環状自動車道や新首都連絡道路という自動車専用道路で結ばれます。首都機能をなぜ岐阜と愛知に振り分けるのか、合理的説明はありません。両県によるメンツと利権の分割です。

 2つの新都市の面積は合計約2000ヘクタール。用地は「ゴルフ場等の開発済み用地を優先的に活用」としており、バブル崩壊後、リゾート系の遊休用地をかかえこんだゼネコンや銀行などへの支援策にもなっています。

 「新首都」の人口は南北両ゾーン合計20万人。そのうち新しい市街地に居住するのは10万人。残る10万人は豊田市や多治見市など既存市街地で吸収するとしています。

 首都圏からの「岐阜愛知新首都」への移転従業者は5万7千人。人口3300万人の東京圏からわずかの従業者とその家族が移転したところで、東京の過密解消にはなりません。

借金漬けのなかで

 「岐阜愛知新首都」建設の費用は約6兆3500億円。国も地方自治体も借金漬けのなかで空前の巨費を投入し、人口減少時代に愛知と岐阜の丘陵地域に西尾市や稲沢市の人口規模の都市を2つつくるという構想です。

 国会等移転調査会の宇野修会長はかつて「ここらで少し壮大なムダをして新しい時代に乗り換えるインパクトをつけてもいいんじゃないか」と語りました。「壮大なムダ」を絵にしたのが「岐阜愛知新首都構想」です。

 愛知県は、万博・新空港関連事業費などで県債残高を増やしつづけ、2008年度には一般会計で空前の3兆6300億円に達すると試算しています。

 これに首都機能移転と関連開発事業の費用が加わるならば、愛知県の財政は奈落の底に落ち、県民にはかり知れない犠牲と負担を押しつけることになるでしょう。

知事選で終止符を

 7月23日、扇千景国土交通大臣は「新官邸ができあがり、新議員会館の建設も計画されているなかで、首都機能移転は最大の公共事業ではないかと思う。今の状況を考えたときには、凍結もあり得るという判断が国会の中でなされるであろうと思う」と「凍結」を口にしました。事実上の首都機能移転破たん宣言でしょう。

 愛知県は1994年度以降の9年間で県民の血税2億5000万円を投入し、首都機能誘致に取り組んできました。今年度予算には「首都機能移転問題調査費」3900万円が計上されています。税金のムダづかいです。

 私は県議会で「首都機能移転対策室」の解散、首都機能移転予算の執行停止、予算を県民支援に振り向けること、国にたいし首都機能移転の中止と国会等移転法の廃止を求めるよう主張しました。

 神田県政はこれを拒否し、「引き続きPR活動や国への働きかけを続けていかなければならない」と強弁し、首都機能移転にしがみついています。来年2月の知事選挙では、県民の審判で首都機能移転に終止符を打つことが求められています。


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