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学費と奨学金考える会 〝誰もが学べる社会にしたい〟

 「奨学金制度を何とかして改善したい」。2人の学生から始まった「愛知県学費と奨学金を考える会」(ATS)が結成5周年を迎えました。誰もが学べる社会をめざした粘り強い活動は、給付型奨学金の創設など、奨学金制度の改善へ実っています。

 ATSは2012年9月1日に中京大学の学生2人からスタートし、現在は愛知県立大学の学生も含め、13人で構成しています。毎年、イベントを開催し、奨学金は「わたし」の問題ではなく、「社会全体」に影響する問題だと訴えてきました。

 今年は、5周年記念として「ジダイにつながる社会をつくる給付型奨学金」(9日、中京大学内)を開催。元日弁連会長の宇都宮健児弁護士を招いた、市民にも呼びかけ、280人が参加しました。

借金抱える不安

 学生メンバーが奨学金制度や活動を紹介しました。日本の大学生の奨学金利用率は51・3%(14年度)。有利子奨学金を月万円借りると、貸与総額480万円、返還総額は505万6654円で、月額2万1069円を20年間払い続けることになると説明。

 「奨学金という借金を抱えたままでは、結婚、子育ては不安」という卒業生、「下宿するより往復4時間の通学のほうが安く済む。バイト中心に履修科目を選んでいる」という在学生の声を紹介。「将来がわからないまま、多額の借金と返還年数を決めなきゃいけない。就職などの進路よりも、まず学費を心配している。各家庭の問題ではなく、社会全体で解決しなければいけない問題です」と指摘しました。

 当初掲げた目標は「有利子奨学金の無利子化」「給付型奨学金の導入」「私学助成の予算拡充」などでした。年3月に弁護士、司法書士を中心に「奨学金問題対策全国会議」が設立され、今年は給付型奨学金制度が創設されることになり、「地道な運動を続けてきた、とても大きな成果だ」と喜びました。

 しかし、給付型奨学金は対象人数も金額も極めて不十分です。「経済格差が教育格差になってはいけない。誰もが学べる社会になるよう活動を続けていきたい」と話しました。

他大学に波及も

 宇都宮弁護士は、会の活動について「孤立をなくすためにも、同じ境遇、立場の人が集まれる場所は必要。学生が主体となって、奨学金について話せる会は重要な意味がある。他大学に波及する可能性を秘めている」と語りました。

 中京大学の大内裕和教授(会相談役)は、「会の結成当時、奨学金は自己責任とされ、問題にされなかった。会の活動が継続してきたことそのものが驚くべきことだ。奨学金制度の改善は、日本社会の未来にとって極めて重要な課題。借りていない人も無関係だと思わず、制度の在り方を考えてほしい」と語りました。

 参加した大学1年の女子学生は「奨学金は親に止められて借りていませんが、夜10時までバイトしています。将来子どもが借りるかもしれない。どういう制度なのか知れてよかったです」と述べました。

(12月21日 しんぶん赤旗)