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リニア訴訟 社会のあり方問う裁判に

 リニア中央新幹線(東京・品川―名古屋)の建設許可の取り消しを求め、国を相手に提訴された行政訴訟は9月23日に第1回口頭弁論を迎えます。裁判の意味、計画の問題点がどこにあるのか。「ストップ・リニア!訴訟」弁護団の共同代表を務める高木輝雄弁護士に聞きました。(今村一路)

 リニア新幹線は超電導磁石を使い車体を10?浮かせ、時速500?を超える超高速で走る世界に例がない交通機関です。東京―名古屋間の86%(約246?)ものトンネルが掘られます。多くのダンプの往来による生活への影響や、地下水・河川の枯渇、直下型地震による深刻な事故などが考えられ、沿線住民をはじめ見直し、中止を求める声が上がっていました。

■ 法廷で説明を
 2014年10月に国土交通大臣が同計画を認可したことを受け、反対する住民ら5048人は同年12月に行政不服審査請求に基づき異議申し立てをしました。しかし、審査している国交省からはいまにいたるも何の回答もありません。こうしている間にもJR東海は工事を進めているので、16年5月20日に東京地裁へ提訴しました。納得できる説明をしてこなかったJR東海を法廷で説明させることも可能です。
 申し立てをした人から738人が原告となりました。静岡以西では静岡40人、長野29人、岐阜94人、愛知85人となります。現在、第1回口頭弁論に向けて、準備を進めているところです。
 私は四日市公害訴訟から公害訴訟にかかわり、東海道新幹線の振動、騒音被害の当事者として名古屋新幹線訴訟の弁護団事務局長を務めてきました。公害訴訟の中心は被害やその恐れがあるかどうかです。リニアが工事の段階から、走行に至るまで、安全・環境上問題ないかが問われます。
 電磁波の問題を見てみましょう。電磁波の人体への影響は世界で研究され、がん、特に小児白血病を多く発症させる研究結果が発表されています。リニアでどうなるのか明らかにする必要があります。
 土砂を運ぶダンプは幹線道路だけではなくて、狭い生活道路も通ります。騒音・振動、通学・通行の妨げなど全区間で問題になります。
 岐阜県の中津川市や恵那市ではウランが掘り出され放射線が出る心配があります。南アルプスでいえば活断層を何本も通過するため、巨大地震が起きたときに時速500?で走るリニアが事故を起こさないか、最深1400?からどう救出できるのか心配です。

■ 専門家の協力
 世界でどこも実用されていない事業ですから、法廷で立証するには、専門家の協力が不可欠です。日本科学者会議などの協力も得ながら進めたいと考えています。
 被害を出しながら、東京と名古屋を約40分で結ぶ必要性があるのか。社会的必要性・合理性も問われなくてはなりません。社会のあり方が問われます。「速いからいい」という人がいる一方、問題の理解広がりはまだ十分ではありません。
 これまでの公害訴訟を見ても理解が広がれば、国や企業に迫ることができ、訴訟を有利に展開できます。議論が不十分な国会でも問題になるでしょう。
 原告団を支えるサポーターも募っています。支援の輪を広げ、リニア計画をストップできるよう頑張りたいと思います。
(8月1日 しんぶん赤旗)