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河村市長の「議会解散」運動に対する基本的態度と市議選など地方選勝利の活動の強化を

河村市長の支援グループは、今日8月27日から「議会解散・リコール」を求める直接請求署名活動を開始する。この署名運動は今日から9月27日の1ヵ月間行なわれ、解散請求成立に必要な署名数は36万6124人である。必要署名が集まり、解散請求が成立すれば、解散投票(住民投票)が実施され、過半数の同意があった場合は市議会解散となる。住民投票の時期は年末から年始となり、市議選投票日は2月6日(日)が想定される。
河村市長は市議会解散決定の場合、自ら市長を辞職し、市議選・市長選・知事選のトリプル選挙をつくりだし、自ら市長選に出馬するとともに知事選にも候補者を擁立すると発言している。
解散請求の成立、不成立を問わず、すでに各陣営は市議選・市長選・知事選・県議選に勝利するため、総合戦のとりくみを本格化させつつある。地方選をめぐる情勢はかつて経験したことのない激しい様相となりつつある。署名スタートの今日8月27日は、いわば2011年地方選「告示」の日である。
わが党は、「解散・リコール」運動や市議選・地方選準備に次の基本的態度で臨む。

一、大義のない「解散・リコール」運動に反対し、全有権者との対話をすすめ、「解散・リコール」を許さない世論と運動を広げ、それと一体に日本共産党への支持をひろげよう

(1)「市議会解散・リコール」の狙いは、2元代表制を否定し、市長“言いなりの議会”をつくることにある。
「名古屋市議会解散請求書」は、河村市長自身が手を入れて作成され、河村たかし市長の公約と政策の実現をはばんでいる市議会を解散し、?「市民税10%減税継続」、?「地域委員会継続」、?「市会議員報酬半減」を実現できる議会をつくろうとよびかけている。まさに、河村市長の、河村市長による、河村市長のための議会解散請求になっている。
自治体の首長が議会を解散させたうえで、市議選に支持候補を大量立候補させ、市長“言いなり議会”をつくろうというのは前代未聞である。
日本の憲法と地方自治法は、議会と首長の双方が住民から直接選挙される2元代表制をとっている。地方自治体の議会は議決権や行政監視権、首長は行政執行権を持ち、相互のチェック・アンド・バランス(均衡と抑制)の関係でお互いの独断や暴走を防ぎ、民主主義を保障する仕組みである。
河村市長は、市議定数を半分に減らし、市議選に小選挙区を導入し、市長派が議会の多数を独占し、市長が思いのままにできる政治体制をつくろうとしている。市議会が定数半減案を否決したために、河村市長は今度は市議会そのものを解散して、市議会を市長支援派が多数を占める市議会につくり変え、議会支配をすすめようとしているのである。その根本には、地方政治における議会と首長の2元代表制や議会そのものを否定する憲法違反の立場がある。
21日に河村市長も参加して、「地方議員年金の廃止へアクション!市民と議員全員集合」という市民集会が開かれたが、この席で三谷哲央・三重県議会議長は、「首長と議会の対立は、ある意味では健全な姿である」「河村市長が議会解散をいうのは不思議である。自分の思ったことが通らないから議会を解散させ、自分が党首の新党を作り、議会の多数をとるという。そういう議会ができたら、翼賛議会になる。市長言いなりの議会で、議会はいらないということである」、と厳しく批判している。

(2)今回の河村市長が主導する「市議会解散・リコール」運動には正当な理由も大義もない。
市議会解散の目的として「解散請求書」には、先に示した3つの政策を実現するために市議会を解散し、新しい市議会につくりかえるとしている。
第一に、「市民税10%減税の継続」というが、河村市長の「減税」は公約違反の大企業・金持ち優遇減税である。その恒久化は市が責任を持つべき福祉・市民サービスの徹底した切り捨てと民営化、財政の悪化をもたらすものであり、日本共産党は、一貫して反対している。この「減税」法案は、昨年の12月臨時議会でわが党は反対したが、民主党、自民党、公明党の賛成で成立したものである。今年の2月議会では、民主党、自民党、公明党によって「一年限り」に修正されたが、ここでもわが党は反対した。
河村市長の最大公約の「市民税減税」は、マニフェストでは「定率減税(金持ちはゼロ)」「子育て減税、勤労者減税、社会保障減税、それらのミックスもあり」と明記されていた。
しかし、市長が昨年の11月議会に出してきたのは、もうけている大企業や大金持ちほど減税額の多い一律10%減税だった。40万人の市民税非課税世帯に恩恵はまったくなく、均等割だけの納税世帯の減税は年額わずか300円である。赤字の中小企業への減税も年額5000円にとどまっている。
河村市長の持ち上げ記事を掲載してきた生活情報紙が減税実施後におこなったアンケート結果によると、減税の実感が「ある」17・1%にたいし「ない」は74.3%を占め、同紙は「『暮らし向きがよくなった』との声は聞こえてきません」(「リビング名古屋東」7月24日付)とコメントしている。  
河村市長は、公約違反を「『金持ちはゼロ』は精神」とごまかし、減税は生活支援目的ではないと開き直った。目的は減税を売り物に市役所あげての企業・富裕層の名古屋誘致作戦をおこなうことだった。市長は「減税しても企業と人が来れば税収は増える」と言ったが、市が依頼した民間調査機関の試算は増収にならないという結論であった。
河村市長の減税には、誘致目的のほかに「福祉の構造改革」という目的があることも浮かび上がってきた。減税実施のための2010年度予算編成作業のなかで市長は、福祉・市民サービスの予算削減方針を打ち出し、「私の考える福祉は構造改革を伴う福祉」「福祉にムダがないわけではない」「減税すると全分野で否応なしで構造改革が始まる。ムダづかいをなくそうという強烈な動機になる」と公言した。
城西病院や苗代保育園の市営廃止・民営化、自動車図書館の廃止、環境科学研究所の廃止、保健所の公害環境部門の縮小、第3子以降保育料無料化廃止、午後4時以降の保育料値上げなど、河村「構造改革」が次々出てきた。これにたいして、「公約違反の金持ち減税のための福祉削減・庶民負担増は許せない」と、市民の運動が急速に広がった。
以上のことからも明らかなように、公約違反の減税を継続することに市民の立場からみればまったく正当性はなく、これを「議会解散」の第一の目的とする今回のリコール運動に大義がないことは明らかである。
第二に、「地域委員会継続」というが、現在8つのモデル学区で地域委員会が発足しており、市議会として、その地域委員会の活動を検証して今後の方向性を決めていくことを提起しており、地域委員会の継続に市議会として反対という態度は取っていない。
本来、住民から委員を選出し、地域予算の使い方を市長に提案する地域委員会は、住民本位に活用されるならば新しい住民自治の仕組みとして積極的な意義をもつものとなる。しかし、河村市長の地域委員会には別のねらいがあった。「福祉の構造改革」の受け皿づくりと市議会の縮小である。市長は、保育所入所待機児や不登校児童の対策など、本来市が責任をもっておこなうべき事業を地域委員会に押しつける態度をとった。「福祉は地域委員会でやってもらう。市は地域委員会がやれない名古屋城づくりをやる」という市長発言に「構造改革」の姿があらわれている。
市長は地域委員会を「ボランティア議会」と呼び、市議定数半減の理由にした。市長は衆議院議員時代に発表した「河村ビジョン」で、学区に「ボランティア議会」ができれば、「市町村議会は発展的解消」と書いている。しかし、市長が「ボランティア議会」と言う地域委員会は市長の行政機関の一つであり、ほんものの議会のように、市長から独立した議決権や行政監視権はない。
第三に、「議員報酬半減」についてである。
この間、河村市長は議員定数・報酬半減の条例案を市議会に出してきた。「オール与党」時代の行政と与党議員の癒着や“特権”を排除する「議会改革」のように見えたが、実は議会を弱体化させ、市長の「構造改革」政治を後押しする市長言いなりの議会をつくることが目的であった。「定数・報酬半減」はもともと河村市長のマニフェストにはないもので、マニフェストでは定数は「10%削減」、報酬はすでに議会が実行していた10%の引き下げを評価していた。                
重大なのは、河村市長が、地方自治の憲法原則である議会と首長はどちらも住民から選ばれ住民を代表するという2元代表制を否定する立場に立っていることである。
議会は多様な民意を反映し、行政を批判・監視し、自治体の意思を決定する議決権をもっている。2元代表制や議会と首長のチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)の仕組みは、都道府県・市町村の行政と議会が丸ごと戦争遂行の道具にされた敗戦前の反省から採用された。戦後の地方議員の待遇保障も資産のない勤労者階級が議会に進出することを保障するためである。河村市長はこうした戦後の地方議会の民主的改革を占領軍の押しつけだと否定し、2元代表制を「立法ミス」と攻撃している。
市議会では、日本共産党が河村市長の議会否定をきびしく追及した。議会外では憲法学者ら著名人が、定数半減に反対し民主政治を守る共同声明を出し、これへの賛同が急速に広がった。最近では、河村「議会改革」について「議会否定」「市長の独善」「独裁化」といった記者や学者の批判的論評がマスメディアに出るようになっている。
こうした世論と運動の高まりを反映して、今回の「解散請求書」では、「定数半減」は盛り込めず、「報酬半減」だけが押し出されている。
「市会議員報酬半減」については、わが党は市長の押し付けでも、市議会のお手盛りでもなく、公開の第三者機関で適切な報酬額を決めることを提起し、額としては全国の政令市で最低となる一千万円程度がふさわしいという提案をおこなっている。この議員報酬問題も議会として議論のただ中にある。
以上のように「解散請求書」があげている3つの目的それ自身が「市議会解散・リコール」に値せず、まったく道理がなく正当な理由にもならないものである。
しかも、河村市長のねらいは、「議会との対決」を口実に、議会解散運動に市民を動員し、河村新党である「減税日本」の市議会大量進出による市長の独裁的な市政づくりにある。
日本共産党は、こうした河村市長の議会解散の企てには反対であり、「市議会解散・リコール」を許さないたたかいの先頭に立つ。

(3)「議会解散・リコール」運動にたいする日本共産党の立場を全有権者規模で知らせ、「議会解散・リコール」を許さない一大闘争を展開しよう。
解散理由が正当かどうかは、最終的には主権者・市民が判断することである。日本共産党は、今回の「市議会解散・リコール」運動の危険な狙いと本質を全党がしっかりとつかんで、広範な市民に日本共産党の立場を伝え、「市議会解散・リコール」を許さないたたかいを全市民的規模の運動に発展させていくために全力をつくす。
「議会解散・リコール」運動にたいする日本共産党の立場(日本共産党名古屋市議団の見解を活用する)をすべての支部・党員に徹底するとともに、読者・後援会員・党支持者にこの見解を届け、日本共産党の立場に対する理解と支持を広げていくことがなによりも重要である。 
同時に、留意しなければならないことは、市民の中での河村市長への「期待」が依然として少なくないことである。市民との関係では、「議会解散に賛成か、反対か」という対立の形で切り込むのではなく、対話と情報提供型ですすめることが大切である。昨年の市長選挙で市政改革を期待して河村市長に投票した市民自身が事実を見極めて、市政をさらに前にすすめる適切な判断をおこなうよう、後押しし、促進する態度が大事である。
具体的には、?今回の「市議会解散・リコール」運動には正当な理由も、大義もないということを事実を示して伝えることとともに、?『市民税10%減税 Q&A』(名古屋市議団作成)を活用し、全有権者規模(「解散・リコール」に賛成する市民、反対する市民、迷っている市民、無関心な市民など)で、河村市長の「議会改革」・「構造改革」や減税の本質とねらい、議会の民主的改革や、まともな「庶民減税」のあり方などの日本共産党の提案をもって市政改革の展望を大いに語り合い、市政への要求を聞き、日本共産党への支持を広げ、党勢を拡大する一大運動をすすめる。
 私たちは大義のない「議会解散・リコール」を許さないたたかいに全力をあげるとともに、最終的な決着は市議選で日本共産党が勝利をかちとることにこそあることを銘記して奮闘する。

(4)いままでも、これからも市政改革、議会改革に全力をあげる日本共産党の役割と値打ちを大いに訴えよう。
昨年の秋以降、「公約違反の金持ち減税のための福祉削減は許せない」「定数半減反対、民主政治を守れ」などの市民のたたかいが急速に広がった。市民と市職員の共同した運動の前進は画期的である。市民の世論と運動は市議会を動かし、「恒久減税」を「今年度限り」に修正し、自動車図書館を存続させ、保育料値上げを中止させた。市長の公約にない国民健康保険料や水道料金の引き下げ、ヒブワクチン予防接種助成を実現した。
著名13氏の定数半減反対の共同アピールへの賛同が広がり、河村市長が市議会に提出した議員定数・報酬半減の条例案は否決された。市議会では憲法原則の2元代表制を尊重する立場から自主的改革がすすみ、日本共産党が主張してきた市議会費用弁償廃止、政務調査費領収書全面公開、議会基本条例の制定が実現した。
こうした福祉・暮らしと民主主義を守る市民のたたかいと連帯し、議会改革をリードしてきたのは日本共産党市議団である。日本共産党は市民と共同し、河村市長の危険な「構造改革」政治の具体化を許さず、市民の暮らし・福祉に役立つはっきりとした成果をあげている。私たちは、こうした運動の到達に確信を持つことが大事である。
日本共産党は、「解散・リコール」の署名運動に対応し、当面、市民要求実現・議会改革推進の5つのテーマ(?国民健康保険料引き下げ、?中学卒業までの通院医療費無料化、?認可保育所増設、入所待機児解消、保育料引き下げ、?雇用対策・中小企業支援、?市民参加・公開で議員報酬引き下げ)で署名運動を提起する。
長引く景気の低迷のもとで、市民の雇用・暮らし、中小企業の営業はかつてなく深刻になっている。いまこそ、「市民の福祉の増進」という地方自治体の本来の使命を発揮するために全力をあげるときである。日本共産党は切実な市民要求の実現と市政改革・議会改革にさらに奮闘する。