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【06.08.06】中部臨空都市 イオン進出しても 前島がら空き

8月6日「愛知民報」

埋め立て総事業費 回収めど立たず

 中部国際空港の対岸部「前島」に、大型商業施設を経営するイオンが進出することになりました。アウトレットモールと大型スーパーを組み合わせた敷地面積16ヘクタール、年間1000万人を超える集客を予想する大型施設です。

 しかし、県企業庁が造成している前島と空港島を合わせた「中部臨空都市」は、埋立面積230ヘクタール。うち分譲(または賃貸)する面積は134ヘクタールです。今年6月1日現在で分譲中が48・3ヘクタール。契約できたのは16・4ヘクタール(イオンを除く)。分譲中の約3分の1にしか過ぎません。「前島」地域は契約できているのはわずかに4%です。

 イオンと契約しても、未契約・未分譲の埋立地は約6割にのぼります。最初は開港時に「すべての土地が機能していること」を想定していたのでまさに「想定外」の事態になっています。イオンの進出が企業の進出の呼び水になる保障はどこにもありません。埋立総事業費2277億円の回収の見通しは、まったく立っていません。

また、税金投入

 これまで建築されたホテルなどの借地料は月額300円/平方メートルですが、イオンの場合は月額140円/平方メートル。10年後に見直すことになっていますが、これまでの半額以下となっています。

 あまりにも土地が売れないので大盤振る舞いをしてイオンを呼び込んだ、ということも特徴です。

 それだけではありません。常滑市からの税金の新たな投入も決まっています。土地・建物の固定資産税・都市計画税の多くを立地促進奨励金として出します。その金額は概算23億円。相当な優遇策がとられています。

地元経済への影響は

 常滑市の人口は5万人と小さく、それが商業施設の誘致の大きな障害にもなってきました。イオンには大型スーパーも併設されており、その主な対象は地元の人たちです。「来街者の増加による地域経済の活性化」といいますが、地元商店街への影響は計り知れません。

 愛知県商店街振興組合連合会は、県内の商店街の衰退を加速するとして反対を表明、計画の白紙撤回を求めて、9月半ばまでに県内の商店街振興組合を通じて50万人の署名を集め、愛知県議会に請願書を提出する計画です。

 一方、地元の4つの商店街振興組合などでつくる常滑市商店街連合会は、2日協議をしましたが、意見がまとまらず、県内いっせいの反対運動への参加は、個々の振興組合の判断に委ねることになりました。

 常滑商店街振興組合の鯉江正広理事長は「振興組合としてイオン進出に賛成しているわけではない。中には活性化につながるという人もいるが、今のように草ぼうぼうにしておくよりはいいという消極的賛成の人もいるし、反対だという人もたくさんいる。ただ、商店街として反対運動なんてできる力はない。こないでいてくれればそれにこしたことはない」と語っています。

振動、騒音も深刻

 中部国際空港が開港して約1年。夏を迎えて、新たな問題も生まれてきました。名鉄電車や飛行機の騒音と振動です。

 名鉄常滑線沿線に住む男性(66)は「家がちょうど線路が高架になっていく上り口にあります。名鉄が特急、快速特急とスピードアップをはかり、過密ダイヤと、4両編成を6両編成にしたので、風切り音と振動が激しくなってきました。夏場になって窓を開けっ放しにしていると、テレビはまったく聞こえないし、安眠することもできません」と語ります。沿線に住むというIさんも「電車がすごいスピードで目の前に迫ってきて、響いて、電話もテレビも聞こえない。防音壁ぐらい作るべきだ。飛行機の音も、風向きによって、すごい音がする。二重苦です」と話します。

 電車の騒音、振動対策は十分やられておらず、飛行機の騒音も、空港は海の上なので問題ないとされていますが、実際に生活している市民にとっては、我慢のならない問題となっています。

 中部新国際空港を核としてすすめてきた愛知県の大型開発優先の行政が、様々なところでほころびを見せ始め、そこに住む市民にとってもけっして地域の活性化につながらないことが明らかになりはじめています。