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【06.04.30】愛知に広がる生活難と格差 『トヨタ』ボロもうけを社会に還元せよ 

4月30日「愛知民報」

広がる低賃金

 愛知県では企業所得の上昇と裏腹に、雇用者報酬の低下が際だっています。愛知県がまとめた2004年度の「あいちの県民経済計算」によると、愛知の実質経済成長率は7年連続プラス。トヨタなど自動車産業を中心とする企業所得の伸びに支えられて県民所得は1人当り344万1000円で前年比1・2%増となりました。

 県民所得の約7割を占める雇用者報酬は97年をピークに減少し続けていましたが、04年度は雇用者数の増加などにより17兆2287億円で前年度比0・5%増になりました。しかし雇用者1人当たりの現金給与額が減っています。原因はパートタイマーなど非正規の比率の上昇による低賃金の広がりです。

非正規雇用

 トヨタ自動車が期限付で雇用している期間従業員数は05年6月現在で1万900人。人材派遣会社からの派遣労働者も約1000人います。『あなたの知らないトヨタ』の著者・伊藤欽次氏は「トヨタでは生産現場労働者の3割を超える期間工など非正規労働者によってトヨタ車の大量生産がおこなわれ、非正規労働者なくして、トヨタ車の生産は不可能である」と言います。雇用契約期間4ヵ月の期間従業員の日給は9000円。残業しても手取りは20万円前後。トヨタの孫受け会社に働く栗田洋輔さん(42)は「派遣社員だから何年働いても賃金は同じ。残業しても年に300万円足らず。こんな雇用はやめてほしい」と語ります。

 愛知県労働組合総連合(愛労連)労働相談センターの阿部精六所長は「昨年1年間で508件の相談を受け、相談者の半分近くが派遣、契約とか請負など非正規の雇用形態です。相談者からは『仕事がきつい、賃金が安い、雇用契約が短い』の不満の声が上がっています」といいます。

 トヨタの社会的責任を問うシンポジウムが昨年11月に開かれました。参加者からは「夫は毎日3時間くらいしか寝ていない。夫の働きかたは異常すぎます」(トヨタ労働者の妻)「毎月80時間の残業と厳しい管理で病気になって労災を申請中です」(下請け会社の労働者)など深刻な実態が報告されました。

大企業に甘く

 自民党政治は減税などの優遇措置によって政策的に富を一握りの大企業と大金持ちに集中させ、経済格差を拡大してきました。トヨタ自動車は法人税率の相次ぐ引き下げや試験研究費税額控除制度による減税効果などによって86年度に比べて03年度の減税額は1727億円少なくなりました。同社の豊田章一郎名誉会長は、所得税・住民税の最高税率大幅引き下げ、株式の配当や譲渡所得の減税で2億9000万円も減税されていると見られています。

 日本共産党の大村義則豊田市議は「04年度の市の法人市民税が前年を下回ったのはトヨタ関連企業が大半を占める『1号法人』だけ。大企業に有利な税制は問題です」と指摘します。

社会的責任

 3年連続1兆円を超える利益をあげる一方で、期間従業員など非正規労働者の大量使用、非人間的な長時間過重労働と不払い残業、下請け企業の単価切り下げを押し付けるトヨタにたいし、社会的責任を果たすよう求める運動が前進しています。

 今年2月には、全労連や愛労連のよびかけで全国から1600人が参加し「トヨタ総行動」が豊田市内でおこなわれ、「トヨタは社会的責任を果たせ!」の声がトヨタ自動車本社や工場門前に響きわたりました。

 実行委員会の羽根克明・愛労連議長は「トヨタは利益を社会に還元する責任がある」と訴えました。

 トヨタなどのサービス残業問題などを追及してきた日本共産党の八田ひろ子前参院議員は「トヨタ自動車は日本一の利益をあげる一方で、働く若者を使い捨てにしています。若者がきちんと暮らせる賃金と人間らしく働けるルールづくりこそトヨタなど大企業の社会的責任です。働くみなさんの労働条件改善のためがんばります」と話していました。