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【06.03.12】ポスト万博 海上の森をどう生かす 森条例の目玉は万博館活用 センター「位置悪い」の声も  

3月12日「愛知民報」

 愛知万博は、1994年の「21世紀万国博覧会基本構想」では海上の森250ヘクタールを予定。「豊かな森林を破壊して、なぜ海上の森で万博なのか」と言う環境グループの運動や市民の声に押され96年11月に150ヘクタールに変更。

 その後、99年5月にはオオタカの営巣が発見されました。海上の森を破壊する万博計画を、同年11月に来日したBIE(国際博覧会事務局)調査団は「愛知万博は、20世紀型の開発至上主義」と批判しました。

 2000年4月に国と県は、海上地区の住宅建設や大規模な道路建設を断念しました。海上の森を開発し万博を開いた後、2000戸の住宅を建設する「新住宅市街地開発事業」を中止しました。同年9月の「会場全体計画」で、瀬戸会場を海上地区の南西部15ヘクタールに縮小し、主会場を青少年公園に変更しました。環境、市民グループの運動によって、海上の森は大規模な開発から守られました。

 日本共産党も、八田ひろ子参院議員(当時)が国会で「海上の森を守れ」と万博会場計画を追及、県議会では同党県議団が万博計画の見直しを主張。環境グループや「革新県政の会」が共同の国際要請団をつくり、96年6月、99年12月、2000年2月、5月、10月、12月、01年3月と7回にわたってBIEやWWF(世界自然保護基金)、IUCN(国際自然保護連合)、ハノーバー博事務局などを訪問し、愛知万博の問題点を訴えてきました。

 国内外の自然保護の世論とタイアップした日本共産党と市民団体、環境団体の取り組みが「新住事業」中止、愛知万博会場計画の大幅見直しに追い込みました。県民の運動で守られた海上の森を県民の宝としてどう生かすか、県民の新たな運動がもとめられています。

 愛知万博の「理念と成果」を未来に継承し、発展させるためにと、海上の森を「愛知万博記念の森として保全と活用」を図る目的で、愛知県は今年4月1日施行の「あいち海上の森条例」を2月県議会に提出しています。

 目玉は、「保全と活用」の拠点とする愛知万博瀬戸会場愛知県館の恒久施設部分を使った、「あいち海上の森センター」の建設です。万博で使用した愛知県館の鉄骨の仮設部分を壊し、内部を改修して研修室や工作室を新設します。改修・外溝工事に約1億円をかけて「あいち海上の森センター」として今年9月にオープンの予定です。

 万博の愛知県館をリサイクル利用するため、海上の森全体の位置関係では南西部のはずれになり、海上の森を訪れる人たちがよく利用する愛環鉄道山口駅から屋戸橋、海上の集落にいたるルートからはかなり遠方。

 研修室などの利用料は高額。利用状況を懸念してか、条例の中には、使用料を納期限までに納付しない場合の延滞金や科料まで設けられています。

 施設の管理・運営が赤字になる可能性が高いのではと懸念されており、リニモ(東部丘陵線)と同様、作ったはいいが利用が見込めないなど「万博の負の遺産」の一つになりかねない様子です。

 他にこの条例による事業として、屋戸橋を過ぎた森の北側の入口にエコトイレの設置がされ、センターで各種の教室が開催される計画です。

拠点になるか

 海上の森の保全活動をしてきた山室美恵子さん(瀬戸環境を考える連絡会員)は「条例を皆で考えようと『海上の森保護保全連絡協議会』で学習を重ね、条例案を県に提案してきたけれど、話し合いの気配はいまだにまったく無い。このセンターの場所では位置が悪く拠点にならない。私たちは、こんなに立派なものでなくていいから、森を歩く前に自然や動植物の勉強ができるような所をとずっと望んできました」と語っています。

「あいち海上の森条例」センター建設などにかかわる愛知県予算 

 年度  項目 項目内容  額(千円以下切捨) 
 2005 施設整備費 万博瀬戸会場愛知県館の恒久施設改修・外溝工事など  1億 567万円 
推進事業費  森の教室・里の教室・自然環境情報の整理など   1,669万円   
2006  新規事業費  「あいち海上の森センター」開館記念式典、シンポジウムの開催   774万円
施設整備費  エコトイレ設置工事、備品、森林関係機械など  6,268万円
推進事業費 森林整備、自然環境維持保全、体験・調査など学習会、リーダー育成など   5,467万円

条例で提案されている「あいち海上の森センター」の使用料

 名前  単 位  使用料 
 工作室  午 前  4,900円
 午 後  6,500円  
 研修室  午 前  3,000円
 午 後  4,000円